コラム「猫の手も借りたい」№298 暑気あたり
“暑気あたり” 半死半生語でしょうか。
私よりちょっと年若の人に訊いたけど、ご存じなかった。
ある人は「夏負け」ですか?と言われて、あ、そうか、と。
“熱中症”というのも今でこそ一般的だが、私にしたらつい最近の言葉で、子供の頃は聞いたことがなかった。夏休みによく親から言われたのは“日射病”で、外出する時は必ず母から「帽子被ってね」と言われたものだ。
しかしこの酷暑は尋常じゃなく、記録更新などどうでもよくなってきた。なすスベもないから。
実は私、最近“暑気あたり”のような症状が出て、久しぶりのことで、そうだ、こんな症状って大昔あったなあ、って思い出した。
エアコンもなかった昔、30度が何日か続くと、暑いんだか寒いんだか分からず汗が引かない、という症状が出て、この食いしん坊の私が食欲がなくなる。自律神経がやられるらしい。
若い頃は夏場に一度は経験していたが、ここんところトンと覚えがなかった。
ムギちゃんが一週間ほど前に食欲をなくし、エサ場に来ないので、夜中まで何度も屋外に立った。
細切れだったがたぶん全部で1時間以上だったと思う。その頃から私も体調がおかしくなった。
何度も何度もエアコンの効いた室内から、高温のしかも湿度が半端なく高い屋外へ出ていく。
身体にいいわけないよな。私まで暑さと湿度にやられてしまったようだ。
そんな中で過ごすネコたち。昨年まではものすごく心配して毎日毎日天気予報とにらめっこ。
あと数日でいったん熱帯夜からは解消される、と聞くと「もう少しだ、頑張って」とムギちゃんに声掛けしながらのエサやり。ところがこの予報が外れると天を睨み「もう!」と怒った。
でも考えてみたら外れたのは「天気予報」のほうだ。
しかしこのところは、1ヶ月も「猛暑」「熱帯夜」は続くものだ、と思うようになった。
これは、これから先は逃れられない状況なのだ。
子ネコだって今までは、春生まれのほうが秋生まれより育ちやすい、と言われていた。
冬の寒さのほうが夏の暑さより子ネコには堪える、ということだったわけだが、逆転する時もそう遠くないであろう。いやすでに逆転しているかも。
ノラネコは、そんなに遠くない将来いなくなるだろうと思っている。
これは、裏を返せば放っておけば自然に淘汰されてしまう、ということだ。
もちろん、この「ノラネコ」の生存ラインは北へ北へ、と上がっていくはず。
北海道で広くノラネコが生息している、などということが起こってくるんだろうか。
さて、旧盆を過ぎ夜の給餌に向かうと、こころ持ち外気温が下がってきているように感じる。
まず、夜が少しでも涼しくなると屋外で生活するネコたちにとっては、かなり楽になるはず。
「ムギちゃん、頑張れ、もうちょっとだ!」
さすがにこう声をかけながら、私はお皿を置く。