コラム「猫の手も借りたい」№221 蛇口を閉めること

この時期は子ネコが生まれる時節で、そのご相談も多い。
このところあまり見かけないが、子ネコが段ボールなどに入れられ捨てられていることは、ないわけではない。
それに比べ圧倒的に多いのが、屋外にいるノラの母ネコが子どもを産んだ、あるいは連れてきた、というケースだ。
このケースのご相談も 段ボール子ネコ と同様に、「子ネコを引き取ってくれないか」というふうに持ち掛けられる。

だが、このケースの子ネコの陰には、避妊手術の済んでいない「母ネコ」の存在があることを忘れないようにしなければならない。子ネコだけピックアップしても、産んだ母ネコ、その地域に根付いているかもしれない母ネコの出産を食い止めないと、子ネコはまた現れる可能性が高いからだ。
母ネコをなんとかしない限り、毎年この時期になると、また産まれるのでは、との心配をずっとしなくてはならない。ネコは秋にも繁殖期を迎えるので、ともすると年に2回は、あの「ミュウ」という鳴き声を耳にすることになる。

私どもはこういう場合、床だけ拭く(子ネコの保護)ことをいくら一生懸命やっても、その上の蛇口から水がじゃーじゃーでている状態(母ネコの出産)では拭き切れるものではないので、この「蛇口」を閉めること(避妊手術)も同時に行う必要があることを、「蛇口と床拭き」に例えてご説明させていただいており、それが「TNR」に繋がるのである。
とにかく蛇口を閉め、産まれないようにしないと、蛇口の下では永遠に床を拭き続けなければならない。

そう思って活動しているが、私はこのところあることにも気がついた。お話すれば「今さらなにを……」と呆れられるかもしれないが、それはニュースでしょっちゅう流れている「多頭飼育崩壊」の問題についてである。

どこにどう飼われていたのか、詰まっていたのでは、と疑われるような数のネコや犬が屋内から見つかり、いわゆる「保護団体」の方が入られピックアップされる画像を目にする。「一軒のお宅から見つかった飼育数が過去最大」などという、ありがたくもない「更新」情報までついてき始めた。
このコロナ禍で、この手のニュースは増えこそすれ減ることはないだろうと思うが、この「多頭飼育」という状況に陥る前に阻止すること、これも「蛇口を閉める」ことだと気がついた。

なんとかこの「多頭飼育」の問題を事前に食い止めることをしないと、15年近く生きる多くのネコの一生を看取ることは並大抵ではない。

多頭飼育されていたネコたちは、フードだけは与えられているがワクチン接種どころか、去勢避妊手術さえも受けていない子も多い。数が多いことで目が行き届かず、健康面で支障がある子もいたり、飼い主にさえ慣れていないこともある。
いわゆる「ネグレクト」の状態になっている場合も多いわけである。
「多頭飼育」に陥らないようにすることは、ネコたちを救うことにもなるわけで、これは非常に有効だと思うが、しかし、どうしたらいいのだろうか……

「多頭飼育」のネコたちには「飼い主」が存在する。このネコたちには飼い主の所有権が発生するので、それは守られるべきであるのは理解できる。
しかし、この所有物の「ネコ(犬)」は別の法律「動物愛護法」というものもあり、この法律で愛護動物である「ネコ(犬)」は守られてもいるのだと思う。

もちろん、屋内でネコ(犬)が増え続けることで飼育費用がかさみ飼い主の家計を圧迫したり、屋内の共用スペースの確保も難しくなり、飼い主の生活の質も守れない状況にもなるわけである。
しかし、本当にどうしたらいいかなあ……

2021年6月 くどいけいこ