コラム「猫の手も借りたい」№2  外猫の食事タイム

隣の道路沿いのアパートのおじさんも猫たちにご飯をあげてくれている。

猫たちは、1ヵ所ではなく複数の餌場を持ちたがる。そりゃそうだ、誰だってセーフティは欲しい。外で暮らす猫たちでは、なおさら、でしょう。

そのおじさんが体調を崩し入院された。しばらくすると猫たちはご飯を貰うべく、うちに徒党を組んで押し寄せて来るようになった!?、ように感じた。猫は基本的にグループ行動は取らない(と思う)。「あなたも行くの?じゃあ私もご一緒に!」なんてご近所お誘い合わせはしない(と思う)。要はみんな空腹なんでしょう、うちの家の庭(「猫の額」の狭~い庭)や前の道路で私を待ち構えている。

猫たちにご飯を与える「餌やり」はそんなに楽でも簡単でもない。アパートのおじさんが入院してすぐ、私の餌のやり方について、近所の男性からクレームが来た。おじさんはアパートの自室前(2階)でご飯を与えていた。男性は、おじさんと同様におじさんの自室前に猫たちを集め、全員にいっせいに与えてくれ、それが近隣から一番目立たないからそうして欲しい、とのこと。それが可能なら私だってそうしたい! が、そんなに理路整然とは行かないのです。

まず、私がアパートの階段を上がって行くと、その状況に慣れてない猫たちは、部屋の前からわらわらと駆けて来たり、逆にびっくりして逃げたりしてうまく行かない。仕方がないから、私は階段下の目立たない場所とか、すぐ脇の駐車場の片隅とかでご飯を与えていたが、それが「近隣から目立つ」とクレームが来たわけ。

そもそも、猫たちは一度に全員は出て来ない。オスは縄張りもあるし、お互い嫌いな相手もいるらしいから、うまいこと避けて時差でご飯を貰いに来る。ご飯を与えたそばから食べる子が大半だが、「あっちいけ!」と私を追い払い、見てないところで食べる子もいる。そうかと思えば、逆に見てないと他の子にとられる子もいるから、そんな子は食べ終わるまで見張っててやらなきゃならない。手がかかるし、十猫十色です。

食いしん坊な子は、なるべく早く食べ終わり、他の子の皿を覗きに行く。強い子は弱い子の上前を撥ねたり、あわよくば最後の子の後ろに並び(まぁ、並びはしませんが)、また貰おうとする。

最初のグループが終了し、容器を回収、掃除していると、待っていた次の子がちらほらと現れる。その子にもご飯を与え、しばらくしてまた次の子、結局10匹近くをやり終えるのに、1時間半くらいはかかる。これが東京の自宅にいる限りは、雨が降ろうが槍が降ろうが毎晩休みなく続く。お盆もお正月もない。本当に猫の手も借りたい。

おじさんは、朝もご飯を与えていたが、猫たちは私から1日1回夜しかご飯を貰えなくなったので、そのうち冒頭でもふれたように、おじさんのアパートで待たないで、私の自宅近くでご飯を待つようになった。本当に猫たち、賢いんです。彼らが集まるとどうしても目立つ、困った困った…  隠れてご飯をやることもないが、住宅が密集した場所では、猫たちは散らばっててくれないと目立つ。「猫がいるのは、餌をやる人がいるからよ!」とおっしゃる御仁もありましょう。しかし、ここでやらなければ、隣やその隣のブロックに猫は移動するだけ、そこにはすでに同じ状況があるはずで、絶対数が多いから住民が猫のキャッチボールをしているにすぎないんです。うちの周りにはレギュラー+準レギュラーで10匹くらいの猫がいますが、ここ2~3年はこの数で落ち着いています。

2010年/7月某日 くどいけいこ