コラム「猫の手も借りたい」№76 十(とお)の瞳 下
「十(とお)の瞳」の中で屋外に残ったのは、「四つの瞳」の2匹。
キジシロの男の子が「チビタ」、可愛いキジトラの女の子を「ちびちび」と呼び、世話をしていくことになった。
盛夏になる前に2匹の避妊、去勢手術をした。
術後、給餌に行ったらば、アパートの前のハウスでちびちびが目を閉じて苦しそうにしていた様を思い出す。
好物の鶏のササミを茹でて持って行ったら、彼女、少し食べ「もういいや」というようにまたハウスに戻り、目をつぶってじっと横たわっていたことを覚えている。
ごめんね、と謝りながら残りを片付けたっけ。
2匹はあっという間に元気になって活発に遊び、ごはんをねだったりするようになった。
チビタは耳が大きくシャープな顔立ち。キジシロの子は周囲にけっこういたが、チビタはハッキリわかった。
男の子なので女の子より活動範囲が広いようで、割りと遠くまで遠征している姿を見かけるようになった。普通に近所を歩いている時、何気なくチビタにバッタリ出くわしたからだ。
「あら、チビタ?!」と呼ぶとびっくりしたような、またバツが悪いような表情を見せた。
そのうち餌場に現れなくなったが、追いかけることも出来ず。外猫の場合はどうしようもない。
彼を時々見かけた辺りの方がご自宅に入れて下さったらしいが、その後チビタは不運なことにその方の家の前で交通事故に遭い、死んでしまったことを風の便りで聞き驚いた。その方もショックだったろう。
1匹残ったのがちびちび。
猫の両耳の先は基本的に三角形に尖っているが、この子は丸い感じがした。もちろん「クマ」ほどではないが、明らかに丸くて可愛い。離れた場所からも彼女と判った。
それに愛らしい顔立ち。尻尾も長くてキレイだった。私たちはソウキジと呼ぶ、白の入っていないトラジマ(キジ)の子は里親会でも人気が高い。体格もオスより一回りから二回り小さくキュート。
フードをねだる時も、下から見つめられると思わず頬が緩んでしまう。
この子も、母のイカクちゃんやら姉妹のメイちゃんやらと同じDNAなのでは(同じなんですけど)、と心配したが、撫でたりさわれたりはしないが温和な性格。もちろん「威嚇」もせず、可愛くて可愛くて、「ちびちびちゃん!」と呼んで慈しんだ。
はー、この子がピックアップされていたらば間違いなく、里親さん宅で違う猫生(じんせい)が待っていたろうと思うととても申し訳ない思いにかられた。
それはチビタも同じである。ピックアップした方は大いに責任を感じるわけである。
しかし、いつも思う。
確かに人に飼われるのも悪くないが、それはあくまで人側の意見であり、屋外で自由に猫本来の生活を送ることだって有意義なはずである。
もちろんそれを選択するのが人だったりするわけで、ここが難しいところではあるが。
この時は、まだPATも立ち上がっておらず、里親会もなく、個人で里親さん捜しをしていたから限界があった。
「あの時保護してやれたら・・・」と残念な気持ちになるのは事実であるが、どうしようもなかった。
さて、可愛いちびちびちゃんに話を戻すと、彼女は8才になった現在も健在である。
風邪もひかず、事故にも遭わず元気であったが、近所に良い餌場を見つけたらしく、ここ1年ほどはほとんど姿を見せなくなった。だがアパートのハウスには毎日戻って来ているとのこと。
時々、思い付いたみたいに夜の給餌時間に現れ、ねだってはちょこっとごはんを食べて行く。
ちびちびちゃん、また来てね。バジルもメイちゃんも元気だよ。
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