コラム「猫の手も借りたい」№73 平井 犬  下

1-2 minaさて、柴子ちゃんですが、叔母は「せっかくのご縁なんだから、うちに迎えたい」と言ってくれた。
平井 堅さんでなくてもいいのか!?

とにかくまず、お見合いをしてからである。それでOKなら「トライアル(お試し飼育)」という運びが一番である。人間でも犬でも相性がある。
お互いに無理すると後々問題行動を起こしたりすることもあり、1~2週間程度のトライアルをしてみて、それで大丈夫となったら正式譲渡になる。

お見合いの日、埼玉からイトコ2人が保護主さん宅へと向かい、私も最寄り駅で待ち合わせ、同行した。

柴子ちゃんとご対面。「あ、可愛い!」というのがイトコの第一声。確かに濃い差し毛が入っており、ぱっと見、柴犬っぽくない。しかし、元気なお譲さんである。

保護主さんにお断りして、持参した「おやつ」をちょっと与えた。美味しそうに食べ「もっと」とねだる。初対面のイトコや私を恐れることもなく、保護主さん宅のリビングと2階を階段を使って行ったり来たり、遊んでいる。活発で元気な子である。
イトコたちもトライアルを希望し、お互いの良き日を選んで埼玉のイトコ宅までお連れいただくことに段取りが決まった。
良かった。
後は保護主さん、仲介のボランティアさん、そしてイトコ家族に任せ、その後無事トライアルも終了し、正式譲渡が決定した。

しばらく経ったある日、イトコからメールが入った。「Kちゃん」と命名された柴子ちゃん、イトコには従うが、イトコの母(叔母)の指示には従わないという。おまけにKちゃんとの距離がなかなか縮められないという。

早速、うちのスタッフ宅に家族と犬で出向き、トレーニングをしていただいた。
スタッフのOさんは、警察犬の訓練士を長年務めて来た人で、犬のことは実に詳しい。お宅にほとんど1日お邪魔して話を聞いたり訓練のコツを教わったが、非常に興味深く参考になった。

Oさん曰く、柴犬の特徴として飼い主に対する愛情表現が上手ではないとのこと。
目で訴えたり尻尾を振ったりということも苦手な子が多いらしく、Kちゃんも然りであった。かといって決して飼い主に懐いていないということではないという。そこは理解して付き合って、とアドバイスをいただいた。

また、散歩中に犬がリードを強く引いて先を行く歩き方ではなく、飼い主の横に並んで歩く「リーダーウオーク」という訓練方法も教えていただき、特に叔母は手ほどきを受け、とても有意義な1日となった。

その後、上手く暮らしているとのこと、ほっと胸をなで下ろした。

ある日、叔母から電話があり、ちょっとした事故でなんとKちゃんが迷子になってしまったと連絡が入った。もちろん彼女を探す傍ら、最寄り交番、近隣警察、保健所、動物愛護センターなどに連絡を入れるようにアドバイスした。

ほんの30分後、再び叔母から電話があり、動物愛護センターに保護されていることがわかった、とのこと。写真付きでホームページにアップされており、Kちゃんに間違いない、という。はー、良かった。交通事故にも遭わず保護され、ラッキーな子である。

叔母が最後に気になることを一言。
ホームページの「Kちゃんの特徴」の欄には「柴犬風(ふう)」と書かれていたという。
 

2014年1月 くどいけいこ