コラム「猫の手も借りたい」№53 空飛ぶ子猫 中

さて、一緒に帰ると決めたはいいが、実家ではインターネットが使えないから、航空会社には電話で問い合わせ。

ペットを飛行機に乗せるには、専用の料金がかかることやプラスチックの丈夫なキャリーケースにての持ち込みが好ましいこと(専用の消毒済みのケージは用意されてはいるが、ペットの移し替えには用心が必要であるし、ケージの数に限りもあるらしい)、客室ではなく貨物室(空調完備)に入れられること、「同意書」への署名、搭乗前の早めのカウンターでの手続きなどの条件を聞き、大丈夫そうとは思ったが、はてさてこんなチビチビ、航空機のフライトに耐えられるもんだかなー、と今度はそっちが心配。そうは言っても乗せるしかない。

また、スーパーへ買物に。空輸用のキャリーケースを買って翌日の帰京に備える。

夜には、離れの段ボールにカイロを入れて保温、一晩は頑張ってちょうだいよ、チビ。人影がなくなると不安なんだろう、鳴き出す。本当ならまだまだお母さんと一緒にいる時期だもの、無理もない。明日一日大丈夫かしら・・・、実家からはタクシーで空港バスに乗り継ぎ、フライト後もモノレール、電車と交通機関を網羅しないとならない・・・。考えても仕方がない、なるようにしかならないから、ここいら辺で考えるのは止めにした。

翌朝、フライト当日である。

チビは元気いっぱい、ちいちゃいくせしてトイレも砂を掘ったり掛けたり上手に使う。これほど小さいとトイレの様(さま)まで可愛いなあ。

食後はすぐにトイレを使うから、出掛ける1時間前に食事をさせ、ペットシートを敷き寒くないように古いセーターを入れたキャリーケースに移したら、にゃーにゃー始まった。こりゃあ道中鳴くかなあと思い「お母さん、ふろしき!」と母に大判の風呂敷を出してもらい、それにキャリーケース自体を包んで外を見えなくしてみたら、鳴き止んだ。東京の自宅までなんとかダマシダマシ連れて帰るぞ。

さあ、子猫との道中が始まった。

朝10時に実家を出発、まずはタクシー、その後空港バスで空港へ。11時30分発の飛行機に乗らなければならない。バスを待つ間に小さい声だが鳴き出した。待合室の人たちが「あら?」という顔、そりゃそうだ、こんな町なかの待合室で小さい子猫の声を聴いたら誰だってびっくりする。心配したが鳴き声は続かずバスに乗り込んでも静かにしていてくれてちょっと安堵。

風呂敷で覆い切れない格子の間から前足が伸び、空を切っている。可愛い。風呂敷をかき合わせるための安全ピンを探したが、あいにく持ち合わせがない。仕方がないのでバスの中で包み直し。

空港のカウンターに到着、ペットを乗せたい旨話したら、「猫ですね」(鳴いてるから判る)とにっこり笑って預かって下さった。しばしの別れ。

実家と自宅を往復する飛行機には、私はもう何度も乗っているので慣れっこに。仕事の合間を縫って帰るから機内ではもっぱら「睡眠不足」を補うべく眠っていることがほとんど。シートベルトをしたとたん眠りに落ち離陸も知らず、どおんという着陸のショックで「はっ」と目覚めることも多いが、さすがに今回はそんなわけに行かず、寝ないで機内の時間を過ごした。チビは飛行機のどこいら辺に積まれているのやら。チビの部屋は空調は効いているみたいだが、音は客室と同様にしているに違いない。大きな音の中どうしているやら、とは思ったもののチビはすべてを私に委ねている。彼を保護してから、私は自分が動揺しないように努めた。

なんだかフライト後に会うのが楽しみになった。

続きます。

2012年12月 くどいけいこ