コラム「猫の手も借りたい」№39 かよちゃん 下
最初は、うまく行っているように見えた。しかし、やはり外に出つけている彼のストレスが大きかったようである。
Yさん宅に来るまでは屋外で自由闊達に過ごし、家の中で他の猫たちと終日鼻面を突き合わせることも皆無だったかよちゃん。なんと彼自身が「マーキング」をしたり、気がつくとお風呂場の洗濯機の上で、皆から離れ丸まって眠っている、というような状況になった。
時節も初夏を迎え、網戸越しに屋外の様子が見て取れると、もう、外に出たくて堪らない様子。うーん、難しいなあ・・・ かよちゃんは「おうち」は要らないということか。
その後もしばらく様子を見たが、他の猫との関係も好転しないため、悩んだYさんは獣医さんにも相談に行った。獣医さんも、この子のためには、交通事故や感染症のリスクはあるが、「元の環境」に戻す方が良いかも、というご意見であった。
いろんなことがあったが、かよちゃんは、また元の「ノラ猫」に戻った。
彼をノラちゃんに戻すにあたり、彼の写真を入れて、その経過と今後のお願いをポスターにまとめ、戻す地域に貼り出した。様子を見ていると、けっこう立ち止まって見て下さる方もあった。「残念ながら、またこの地域に戻る」こと、「給餌などの世話は、ボランティアが責任を持って行うので見守って欲しい」などの主旨をお読みいただいた。
今は結局、かよちゃんはNさん宅を離れ、昼間は高齢のご婦人宅で、夜間は仕事を終えて帰って来られる3軒目のご夫婦宅と、上手に世渡りをして勝手気ままに暮らしている。
子供たちとも顔馴染みのかよこ、また、道端でランドセルを降ろしての一休みの光景は変わらない。
私のことも覚えてくれているらしく、私の餌やりの最中に、ふらりと姿を見せたりしてくれる。
かよちゃん、車にはくれぐれも気をつけてね。
2012年/4月某日 くどいけいこ
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