コラム「猫の手も借りたい」№29 予期せぬ出来事 上

毎朝私は、C公園の脇を通って通勤している。C公園にもご多聞に漏れずノラ猫はいるが、公園付近の猫たちの面倒をみる方々がいらっしゃるので、様子を見ながらかよっていた。

ある日、C公演に差し掛かった時「黒い物体」が公園の中を横切って行くのが見えた。

猫である。

前足に不具合があるようで「ひょこたか」歩いて、中央の噴水の方に行く姿を目で追った。

近寄ると「右前足」が利かないようだ。若い。体の大きさは成猫とあまり変わらないが、1歳未満のオスかな、と思った。

黒猫は汚れて弱っていた。優しく声をかけつつゆっくり後を追った。噴水傍の台の上に飛び乗ったので「お、飛び乗れる元気はあるのかい?!」と思ったが、様子を観察しながらすぐに思い直した。目や鼻を見ても風邪も引いているし、右側の肩から前足にかけては、広範囲で皮膚がズタズタになっているように見え、これは放ってはおけないな、と咄嗟に判断した。

彼をその場に残し、近くのスーパーに保護のためのキャリーバックを買いに走ったが、ペット用品売り場では扱っていなかった。チビ子猫なら「洗濯ネット」という手もあるが、さすがに彼には無理と判断した。キャリーバックはともかくとして、このまま現場に戻ってこの黒猫が居なければどうしようもない。「居るかな、居ますように」と思う反面、居なかったらそれはそれまでの縁でしかないな、とも考えながら戻る自分がいた。

彼はそのまま台の上に居た。私を待っていたわけでもあるまいが、縁は切れなかったということか。保護するにもキャリーバックがないから私宅の近所の仲間に電話をし、キャリーバックを届けて貰うことにした。

その間、彼は甘えた声で鳴いていたが相当身体はきつそうに見えた。持っていたドライフードを与えたら、少しだがカリリ、カリリと噛んで飲み込んだ。

しばらくするとキャリーバックが到着。来たものの、さてどうしたもんだか、うまいことキャリーに入るのだろうか、と懸念しながら「よしよし」と手を伸ばすとすんなり抱っこ出来、キャリーに保護出来た。

すぐにタクシーを拾って、動物病院へ。

病院の診察台に乗せると、彼は不安気ではあったが辛そうで「もう、どうにでもして」というふうに見えた。

診察して下さったドクターは、肩から前足にかけてのケガは「自転車かバイクにちょこっと当てられたかな?」とのこと。それと、やはり風邪が酷くかなり弱っており、預かる(入院)けれど「助からないかも」と言われた。「ドライフードは食べましたよ」と話すと、「え、こんな状態で食べたんだ?!」と驚きの声。

その後、病院から経過連絡があった。生後7~8ヵ月の若いオス、肩から前足にかけてのケガはレントゲン検査の結果、骨折などの所見はなく恐らく他の猫に執拗に咬まれて出来た大きな傷であろうとのこと。風邪も酷いのでこのまま治療を続けると仰って下さった。

続きます。

 

2011年/9月某日 くどいけいこ