コラム「猫の手も借りたい」№25  事情聴取  下

もう一度暗い中確認した。やはり、光が漏れる交番の裏口から出入りしている。その空き地は高い金網の「フェンス」で囲まれているので、裏口には近づくことが出来ない。

私たちは、交番に声を掛けた。「すいません、先日お邪魔したボランティアの者ですが、子猫がお宅様の裏口から中に入っているようなんですが」と私はいきなり切り出した。というのは、交番の受付で対応して下さったのは、まさにこの間お話したお巡りさんご本人だったからである。
「あの~、かくかくしかじかで」との説明もなく単刀直入に尋ねてみると、奥の部屋(子猫がいると思われる裏口の部屋)から「子猫ですか~? いますよ~」と他のお巡りさんの声。
私は依頼主さんと顔を見合わせ「ちょっとお邪魔しますね」と奥へ入らせていただいたら、なんと、子猫は室内で紙の上に置いてある「ドライフード」を夢中で食べている最中であったから、もう、びっくり。

なによ~お巡りさん、餌をやってる人はいないと言ってたのは誰だったの??!

「どなたか交番の方がフードをやって下さっているんですね~」と言ったら、お巡りさんたち、黙っちゃった。

早速、保護に移ることにしドライフードは頼んで下げさせていただいた。また、保護の妨げになるような椅子やゴミ袋などは移動していただき、皆様にはお声をかけ「いつもと同じようにしていて下さい」とお願いした。

キャリーバッグにフードを入れて室内に仕掛けると、すぐに来た来た、可愛い! 

観察していると~、賢い!フードの塊をくわえてドアの外まで持って行き食べている。よっしゃ、とばかりに今度はキャリーバッグの奥に、フードをスプーンで塗り付けてみた。これでくわえて持っていけまい。

思惑通り、キャリーの奥まで入ってフードを舐め出したので、バタンとフタを閉め保護成功。見ていたお巡りさんもニッコリ。

「もう1匹いるんですよね」と尋ねると、「いつも2匹で必ず一緒に来るんだけど」とのこと。しばらく交番の中で待たせて貰ったが子猫は入って来ない。交番を出て、空き地を偵察に行った。

こんな雨の季節、まだ寒い晩もあろうから、2匹で固まって暖をとっていた子猫たちを  1匹には出来ない。何とか保護したい。

暗闇に目を凝らすが、見当たらない。懐中電灯でそっと照らしてみてもいない。うーん、困った。どうしようか・・・と依頼主さんと顔を見合わせていたら、来た! 一回り小さそうなグレーの子猫。やはり、交番裏口から中へ入って行くではないか。

仕方ないから、また交番にお邪魔した(笑)。この子も、用意してあった別のキャリーで同じように保護出来た。はー、良かった。

お巡りさんたちも、ほっとした様子。

保護の合間に尋ねてみると、子猫は最初3匹、子猫と同じ色の母猫もいたらしいが、母猫と子猫1匹はここしばらく見ていない、という。

運良く子猫を保護出来ても、母猫が残っていればまた子猫が産まれてしまうかも知れない。母猫や他の子猫を見かけたら連絡を下さるようご協力をお願いし、交番を後にした。

「良い里親さんを見つけて下さい」と皆さん。

今夜はへんな捕り物でしたね、お巡りさん。お疲れ様でした。お忙しい中「手」を貸して下さり、ありがとうございました。

 

2011年/7月某日 くどいけいこ