コラム「猫の手も借りたい」№22 うらめしや~ 上
3・11の震災は無事乗り越えた私のシマの猫たちだったが、月が終わる頃、いきなりくーちゃんが来なくなった。私が帰宅した時には「ごはん~」と庭におり、変わった様子はなかったが、2時間後の22時にはすでに姿がなかった。
くーちゃんは、記録を見ると07年1月に避妊手術をした、推定年齢6歳の黒色のメス。警戒心は強いが、人に手入れされたように奇麗な猫。目の色が白みを帯びた金色で美しい。毛の艶も良く、事あるごとに「シャー!」っと怒らなければ、本当に可愛い黒猫である。
06年にちらほら姿を見せるようになり、ご飯はたくさんは食べない、ドライフード好きの世話が楽な猫。たぶん、他の餌場も持っているんではと想像する。
避妊手術をした時も、ドクターは「キツイ(性格が)子だね~」と仰っていたが、それ以後、うちの庭にいる先輩キジトラのメスとも上手く折り合いをつけ、毎晩ご飯を貰いに来るようになっていた。
姿を消した日から私は毎夜「くーちゃんや~い」と近所を探し歩いたが、見つけることは出来なかった。これは事故か、ケガか・・・。病気かも知れなかったが、それまでは変わった様子がなかったので、その線は薄いな、とは思っていた。
いなくなってから4日目の夜、門扉の外にくーちゃんの姿があった。暗がりでだがよく見ると、くーちゃんは右前足を「うらめしや~」の形で持ち上げ、痛みで地面につけない様子。いつもは塀を越えて来るのに、その時は3本足で開けた門扉からひょこたか歩いて入って来た。
すぐに抗生物質を混ぜたご飯を与え始める。食欲は上々で、ちょっと安心した。これが足のケガなら5日も投薬を続ければ改善されるはずである。本当は即、お医者に連れて行きたかったが、キツーイ性格のくーちゃん、おいそれとは手が出せないので、まずは投薬で様子を見ることにした。
5日の投薬後も前足の「うらめしや~」には変化がなかったが、その頃には二次元の門扉から歩いてやって来るのではなく、三次元で塀の上から現れるようになったのだ。つまり、最初は平坦な場所しか歩けなかったのが、数日で跳びあがれるようになっていた。猫の運動能力ってすごい。3本足でもバランスが取れるようになり、そのうち屋根の上でも見かけるようになった。でも、3本足には変わりがなかった。
会の仲間にも相談した。たぶん「骨折」であろうが、万が一何かが足に刺さっていたりしたら、行く行くは足を失いかねないから、やはり診察して貰おうよ、という結果で意見が一致した。
骨折ならば、そのうち骨は歪(いびつ)な形でくっつき、元には戻らなくても、そのままの状態で生活に支障はないのでは、と私は推察した。もちろん、入院させて治療を受けさせたかったが、外の猫には「入院」がものすごいストレスになるから、命に関わるほどのことならば致し方ないが、そうでなければ極力回避したい。
しかし、何かが足に刺さっていたり、あるいは全く別の事情が起きていたなら、足を失うかも知れない。
私は避妊手術をした時と同様に、トラップを使い彼女を保護することに決めた。
続きます。
2011年/5月某日 くどいけいこ
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