コラム「猫の手も借りたい」№21 地域猫の避妊・去勢手術 下

さて、「猫の捕獲(保護)」についてのお話し。

捕獲器は「餌」をオトリにして捕まえる形式のトラップなので、猫たちにはお腹を空かしておいて貰わなければならない。捕獲が決まったら1食分、餌は与えないようにする。捕獲後はどの道手術になるので、基本的に胃に食物が残っている状況を作ってはならない。嘔吐物が気管に入り窒息したりする可能性があるからだ。それもあるから1食抜くわけである。もちろん「オトリ」の餌分はどうしても必要だから、最小限度に留めたい。

トラップは、猫が毎日餌を食べに来る場所に、多目の数を仕掛ける。「この子はこのトラップ、あの子はそっち」なんて人が采配したって猫はききっこないからである。猫の数より多目のトラップがあった方が確実なのだ。

私たちが地域猫の捕獲を頼まれた場合、その猫たちに毎日餌を与えている時間に、その猫たちのお世話をしている「餌やりさん」に来ていただき、餌は与えないがいつも通りに猫に声を掛け普通に接して貰うようお願いする。そうしないと、猫たちは利口で異常をすぐに察して警戒してしまう。全然知らない人がいきなりトラップを仕掛けても上手く行かないのだ。私のシマの捕獲時も、私は極めて普通にいつも通り猫たちに接した。

捕獲出来た猫は、トラップに入れたまま病院に運ぶ。もちろん、捕獲する前に病院に連絡し手術の予約を入れておく必要がある。病院によっては、「猫を洗濯ネットに入れて来て」というところもあるみたいだ。いつも地域猫の手術を依頼する会のドクターとは「パニクリまくって危険な猫を、素人が洗濯ネットに入れ替えるのは、かなり危険だし勇気が要るよね」と話している。人間に全く馴れていない猫を素手で触るなどもってのほかだし、暴れる猫をそう大きくもない洗濯ネットに入れ替えるのも大変危険である。これは動物の扱いに慣れてる獣医さんにお願いしたいものである。

いよいよ手術の運びとなるが、大方の動物病院は午前中の診療が終了し、午後の診療が始まるまでの間に手術される場合が多いようである。その後病院によるが、当日の夕方か翌日にお迎えかの指示があり、その後の注意事項を話して下さる。大概は異変がなければ手術の翌日中に捕獲した場所に放し、数日間餌に薬(抗生物質など)を混ぜて与えながら様子をみる。

抜糸は基本的に行わなくて良いように処置して下さる。したくても出来ないからである。

妊娠していて開腹が大きかったメスは、2~3日置いて様子をみて、と指示が出ることがあるが、ほとんどが術後24時間程度で、元の地域に放して大丈夫である。

こんな段取りで、私は近隣のノラ猫の手術を終えたし、ボランティアとして手術の依頼主さんたちと一緒に「地域猫の手術」を行っているのである。

 

2011年/5月某日 くどいけいこ