コラム「猫の手も借りたい」№16    里親会

このところ、あちこちで「犬・猫の里親(譲渡)会」が行われている。行われている場所はいろいろであり、犬は、飼い犬が迷ってしまって保護されたり、あるいはいろんな事情で飼い主が飼えなくなった子たちの里親を見つけるためだが、猫は、ノラ猫・捨て猫で、子猫を含む「飼い主のいないネコ」の新しい里親(飼い主)さんを探す会が多数である。インターネットでも大変盛んに行われていて、多くのサイトもある。ペットショップに行って購入する人も多いだろうが、この頃は「里親(譲渡)会」の活動を知って、その活動に共感して里親会に足を運んで下さる方も増えている。ちなみに、私たちも有志で「里親会」を行っている。

「地域猫」の活動をしていると、多くの避妊・去勢手術の依頼がある。地域にいるノラ猫たちの避妊・去勢手術をして子猫が産まれないようにし、その個体の面倒を一生涯みよう、というものである。

さて、依頼主さんから手術依頼があり、メスの避妊手術をしたところ「妊娠」していた、というケースが少なくない。もちろん、胎児が小さいと妊娠していることが見た目では判らないわけだが、ほとんどのメス猫たちは基本的に「恋の季節」を迎え、その後妊娠するわけで、時々季節はずれの妊娠もあるが、それはレアなケースである。手術をするとなると残念ながら母猫のおなかにいた子猫たちはすべて処分しなくてはならず、手術される母体のリスクも高くなる上、何より「動物の命」を救うために従事していらっしゃる獣医師さん、看護師さんは、非常に悲しい思いをされているに違いない。

私たちボランティアに手術依頼があり、保護した猫が妊娠していたことが判った場合、そのことを依頼主さんたちに伝えた時の反応はまちまちで、「えー、可哀相なことをした、ごめんね」というものと、逆に「良かったー、間に合った(子猫が産まれる前に処分できた)」というものとがありボランティアの胸中は複雑である。中には最初から「餌をやってる猫が妊娠したので手術したい」という依頼も実はけっこうあり、「残念」を通り越し「怒り」がこみ上げることがある。確かに、おなかの子猫が産まれたら世話をするのは大変に違いない。しかし、これが子猫が産まれてしまって、一番可愛い「キトン」と呼ばれるような子猫になってしまうと、みんな「なんて可愛い子猫なの!」と、それこそ必死になって「里親さん探し」をされる方ばかりなのに、おなかにいる子猫に関しては「間に合った!(産まれなくて良かった)」と言われる方が多いのも事実である。私はこの「矛盾」を非常に残念に思う。だから、妊娠したメスを手術した依頼主さんには必ず「今後は妊娠をする前に、必ず手術をして下さい」と重々お願いする。

齢がばれるが、私の小さい頃は年齢の数え方に「満(まん)」と「数え(かぞえ)」というのがあった。「満」は今と同じで、誕生日が来ると1才年齢を重ねる数え方であり、「数え」という年齢の数え方を知らない人の方が世の中の大多数ではないだろうか。この「数え」というのは、生まれた時が1才で、お正月を迎える毎に  1才ずつ歳を加える日本に昔から伝わる年齢の数え方である。

これは、お母さんのおなかの中に宿った時から既に「1才」と数えるわけで、「胎児も一人の人」という考え方である。この教えを説いたお釈迦様は、「命は尊いもの」であるとおっしゃっているわけである。十月十日(とつきとうか)おなかにいる人間の胎児と比べると、猫は約60日ほどであるが、それでも一度宿った命、産まれてしまったら一生懸命里親さんを探すようなら、まず、その前におなかの子猫を殺さぬように、餌やりさんは注意してやって欲しいものである。

只今3月、もう少し暖かくなると子猫ラッシュが始まり、里親会に可愛いチビチビたちが溢れる。里親会に参加出来る子猫は、運が良い子たちなのである。

2011年/3月某日 くどいけいこ