コラム「猫の手も借りたい」№15   正月明け 下


不動産屋さんとの契約も何とか完了し内装も急いで貰って、知人の引越しが出来たのが結局  11月初旬だった。隣近所の挨拶回りや、設置工事などでしばらくは人通りがあるので、猫ハウスは直ぐには戻さず様子を見た。

そもそも単身者向けのアパートは、お互い隣近所の顔を知らないというケースがほとんどだが、おじさんのお隣さんはけっこう気を使って下さる方でご挨拶が必要だったし、隣だけして階下の方に挨拶しないというのも気が引けたので、アパートの皆さん3軒に挨拶していただくよう段取りし、私が引越し蕎麦代りの簡単な品物を用意したりして知人に回って貰った。

 

さて、そもそも猫たちはおじさんには馴れていたが、私の友人には馴れていないから、果たしてアパートに戻って来るのか半信半疑ではあったが、寒くなり別のネグラが見つからなければ必ず戻って来ると私は考えていた。

 

いよいよ猫ハウスを戻すことにし、けっこうくたびれてはいたが以前に撤去したハウスをそのまま置いた。自分たちの匂いが付いたものの方が、スムーズに早く戻る可能性が高いのではと、敢えて新しいものにはせず、少々の補修をしただけで元の場所に置いてみたのだった。

 

お陰様で、正月明けの現在、すべて猫たちは戻って来ている。見えないけどおじさんが導いてくれているのかも、とも思う。
越して来た知人が「今日は玄関先でキジトラの女の子をみた」とか、観察して情報をくれているので安心でもあった。
大寒波が到来したが、みんな何とか元気で食欲も落ちず毎日を過ごしており、夏からの長丁場であったがやっとのことで何とか落ち着き、胸を撫で下ろしている今日この頃なのである。
何度か「こりゃ無理かも・・・」と思う展開もあったが、諦めずに粘った甲斐があったというものだ。

 

ところで、このところ以前と事情が変わったことがある。「コラム№2外猫の食事タイム」で書いたが、おじさんにご飯を貰えなくなった猫たちが、ご飯を貰いに私の自宅に徒党を組んで押し寄せるという困った事情があったのをご記憶だろうか。残念ながらおじさんは亡くなってしまいハウスも無くなったので、これがますますエスカレートするかと思いきや、昨年の秋頃からだったか、少し事情が異なって来た。

 

拙宅の庭はずっと2匹のメス猫がなわばりにしているのだが、新顔が現れた。これは以前からうちの北側の川近くで見かけていた茶白のオスで、昨年夏頃からうちの庭に現れるようになり、私も最初はどうしたものかと様子を見ながら考えあぐねていたが、庭にいるレギュラー猫たちのご飯を奪ってしまうので致し方なく給餌に踏み切った。
この茶白くん、体格の良いオスで近隣に幅を利かせており、この茶白くんを恐れレギュラー2匹以外の猫が拙宅の庭に入って来れなくなってしまったのである。なので、うちの庭はかなり静かになり落ち着いて来た。

 

このように、なわばりを持つ猫属は、オスが自分のなわばりを守るため他の猫をシャットアウトしてくれるわけである。これもオスを去勢手術するとなわばり意識が弱くなってしまうケースが多く、そうすると他の猫の侵入を防げない場合もあったりし、オス猫同士の力関係やいろいろな状況を踏まえた上で手術を考える必要がある。
今回も、もしレギュラーの2匹がうちの庭から追われるようなことになるなら、この茶白くんは手術せざるを得なかったが、彼はうちの2匹のお嬢ちゃんたちと折り合いを着けてしまった。今のところ、このまま見守って行こうと思う。

 

そろそろ、猫たちの恋の季節の到来である。メスはこの時期から妊娠し始めるので、避妊手術を考えている方は一刻も早くしないと妊娠する危険はあるが、1年で寒さが一番厳しい折でもあるので手術するにしても十二分の注意が必要である。

妊娠したメスたちが出産するのは約2ヶ月後、そう約60日後である。「え゛、そんなに早いの!?」、はい、そんなに早いんですよ。
メスを見て「あれ、肥った?!」と思った時点で大方3週間後くらいには子猫が産れてしまい、ゴールデンウイーク前後に生後2カ月くらいになったのがわらわらと現れるのである。

 2011年/2月某日 くどいけいこ