コラム「猫の手も借りたい」№11 飼いねこの外出

うちで飼っている猫は、「室内飼育」をしており、外出はさせていない。

うちの猫(メス;推定10歳)は5歳くらいまで「ノラ」ちゃんだった。色々あって、うちの子にしよう!と決め、一番最初にした事は避妊手術だったが、病院で「手術痕がありますので、恐らく手術されているものと思われます」とドクターに言われ、「この子はどんな経緯でノラになったんだろうかな~」と想いを馳せた。手術して外に放された(捨てられた)のか、あるいは何らかの事故で家に帰れなくなったのか・・・ 飼い猫をわざわざ避妊・去勢手術して捨てる(放す)人はほとんどいないから、後者の理由なら「手術されていた」ことも納得は出来るが、それとも私のようなボランティアの存在があったのか・・・ きっとどんなに考えても真相は判らないだろう。

うちの子にして最初の頃は、実は外出させていた。外を知っているから、もう出たくて出たくて仕方がない彼女がそこにいて、ヨシとしてはいないが外出OKにしていた。彼女が外出中は「事故に遭わないか、ケガをしないか、 病気にかからないか」など心配で仕方なかった。だからワクチンも最大限カバー出来る「5種混合」を接種していたが、それよりもむしろ閉じ込めるストレスの方が影響が大きく心配であった。一度台風の時閉じ込めたが、室内にトイレを何ヵ所か置いているのに我慢したのか、なんと「膀胱炎」になったりしたからである。彼女のストレスがいかばかりかお解りいただけると思う。

そうこうしているうちに、彼女は大変な病気になり大学病院で手術することに相成った。症状が出て大病であることが判明し手術が終わって家に帰って来るまで私は気が気じゃなかったが、何とか危機を乗り越えると呑気なもので、まだ抜糸も済んでいない「包帯服」のままでも外出したがった。玄関ドアの前にピッタリと張り付き「外に出たいポーズ」で身構え「ニャー!」と鳴く。あまりの意志の強さとストレスを感じている彼女の様子を見て根負けし、結局包帯服を着たまま外出させた。帰って来たらば当然だが、包帯服が真っ黒け、とほほ。

この後、彼女はまたまた大きな病気になり、再び大学病院のお世話になった。今度は発症してからしばらく、歩くことさえ困難であったが、それでも彼女は「いやん、お外に出る!」と私を見上げた。でもそんな状態で外に出たら危険極まりないので、これを機に彼女は「完全室内飼い」の猫となったのであった。

長々うちの子のことを書いたが、「外出」は大きなリスクを伴う。交通事故、ケガや感染症、飲食してはいけないものの誤飲や誤食、そして迷子、帰れなくなってしまうことだってあるわけである。また、当然外出先のどっかで「用足し」もするわけで、例えば、お隣のご主人が丹精こめて整備されているご自慢の「花壇」にしちゃったりもするかも知れない。うちの子がどれに当てはまっても嫌だから、本当に外出して欲しくなかったのが本音である。当猫 (とうにん)のことを考えても、ご近所の迷惑を考えても、住宅が密集している「都市部」で猫を外出させることは、出来る事なら避けたいと思うわけである。

しかし、ちまたには首輪を着け陽当りの良い庇なんかにゴロンと寝そべったりしている、明らかに「飼い猫」と思われる猫もまだまだ見られる。やはり「猫は自由な動物だから閉じ込めるなんて」と屋外への出入りを自由にさせている飼い主さんもいらっしゃり、過去からの飼育習慣も根強く残っているものと推察される。 外出が習慣化した猫を室内飼いにするのは大変難しい。とにかく、猫にもの凄いストレスがかかるのは誰よりも私が体験済みである。だが、事故や病気から飼い猫を守り、近隣のお宅とのトラブルになるのを避けたいなら、ことある毎に機会を見つけて「室内飼い」にトライすべきである、と私は思う。

私の年配の友人は「猫は自由ないきもの」と自由に外出させていた。その猫はある時病気になり、食養生が必要になったため処方食を出されたが食べられず、それが過度のストレスになったようだ。おまけに、外出まで禁じられてしまい、更に強いストレスに晒されることとなり、本当に可哀想だった。それを見ていた友人は「はぁ~」っと小さい溜息を洩らし、「子猫から飼っていたんだから室内飼いも可能であったのに・・・ そうしていれば今頃、閉じ込められることのストレスは感じなくて済んだものを」とぽつりと言った。

 2010年/11月某日 くどいけいこ