コラム「猫の手も借りたい」№10    タヌキ

一昨年(08年)だったか、うちの近所に「タヌキ」が現れた。もうびっくり! 夜の餌やり中で、自宅の裏の通りを歩いていたら、いきなり、大きな猫くらいの動物が5メートルほど先を横切った。あれ~、何だ??と思った。

その「大猫」は道の真ん中で立ち止まり、身体をぶるぶると素早く震わせる動作をし、その後私の方を見た。毛色はグレーや黒・茶色でしっぽはふさふさ、体型もなんだかずんぐり、眼の周囲が黒く見え、びっくりしたが、ここで「タヌキ!!?」と気がついた。

うちは東京のはずれではあるが、一応23区内である。この地に住み始めて30年、一度も見たことはなかった「タヌキ」、いたんだな~、うちの近辺にも。

この年は、確か大雨が降り荒川の河川敷が水浸しになったりした。河川敷でタヌキを見かける、という情報は前からあるにはあったが、そのタヌキが河川敷を追われ土手を越えて来たのかな。

私は、うちに帰ってから友人に「タヌキがいたよ」と電話しまくった。実家にも電話し「猫じゃないよ、眼の周りが黒かったもん!」と強調したら「ホント?お前の見間違いじゃないの? サングラスかけた不良の大猫、見たんじゃないの!?」と父に冗談を言われ、大笑いした記憶がある。お父さん、座布団1枚!

そうしたら、数日後、近所の例の地主さん(コラム№3・4「ルーツといきさつ」に登場)が「いたよ、いた!」って電話をくれた。むろんタヌキがである。なんと「2匹」いるそうな。番いかな。地主さん宅の裏庭辺りでちょろちょろしていて、なんとも言えないタヌキ独特の匂いがするので、あ、タヌキが来たな、いたな、というのが判るそうである。

私も「今、いたよ!」っていう直後に呼ばれて現場に行って「残り香」も嗅いでみたが、よく判らなかった。タヌキはどうやら、地主さん宅の隣家の物置の床下に潜り込んでいるらしく、オシッコとかの匂いもしてるらしい。その場所は例の「車の入れない静かな場所」だし、物置や空き家もあるから、そこに落ち着いたと推察できた。また、近隣の屋外の犬小屋で飼われている犬の残り餌なども食している可能性も否めない。あ、あそこには「柿の木」があった。熟して地面に落ちた柿が彼らのごちそうか、まあ、そこが暮らしやすいんでしょうかね。

PATの定例会で、私は「近所でタヌキ目撃」を報告した。会員の中に鳥獣保護員や獣医師が所属しており、「ちょっとした森とか、藪にいるが、区内の住宅街にもいるよ」とのこと。やはり空き家の床下などに住んでいるものも時々いるらしい。獣医先生は「タヌキではないけど、以前ハクビシンの子供を拾った、と連れてきた人がいたよ」とのこと。この先生の動物病院も北区内であり、「ハクビシン」もいるんだね。いつだったか、香港で伝染病が流行った時、感染源では??と疑われたのがハクビシンじゃなかったかしら。結局違ったようだけど。

タヌキは、「疥癬(かいせん)」を持っている個体が多いそうである。「疥癬」はちなみにノラ猫でもけっこう見られる。感染すると、疥癬を引き起こすダニ(猫はヒゼンダニ)が皮膚の中に寄生してしまうため猛烈に痒く、かきこわした皮膚が細菌感染を起こす。さらに進行すると敗血症を起こし死に至ることもある怖い病気である。土地開発が進み住み処を追われたタヌキは、同じ餌場を共有せざるを得なくなったりし、個体間の接触が多くなり感染が広がるらしい。タヌキの疥癬も、人間の土地開発に一因があるなら残念なことである。
「地球は人類の私有地ではない」と何かに書いてあったが、本当にそのとおりだ。

 2010年/10月某日 くどいけいこ