コラム「猫の手も借りたい」№8 深夜の小声バトル 下

ご婦人「あなたね~、餌をやって、猫増やしてる人って!!」

と言われて、「(ちょっと待てよ、この言い方は近所の誰かからそんなふうに聴いてるな?!)」って思った。

私「基本的に猫の避妊・去勢手術は済んどります」

ご婦人「知ってます、あなた、凄く猫がお好きだとか」

なんだと~「知ってる!?」 ということは、手術までしてるのに何で猫を増やしてるって発想になるんだ?? それに、「猫好き」だと?そりゃ猫は好きだけど、「餌やり」という行為は「好き」だから出来るもんじゃないぞ、こんなに大変なこと、代わって下さる人がいたら、直ぐに譲るよ。

それからご婦人は、自分の家の庭に来る猫たちのこと、植木鉢はひっくり返すわ、オシッコはひっかけるわ、塀の上はすり抜けるわ、前の道路の真ん中で堂々とごろんごろん寝てるわ、などなど困っていることをたっぷり話された。

私は、ご婦人に、この数年で近隣の20匹に近い数の猫の手術を行ったこと、生まれた子猫も出来る限り里親探しをしたこと、私が北区を中心に活動している「ボランティア団体」の一員であること、などなど説明した。また、「猫」は私たちと同じ地域に「共生」している動物であり、猫にも居場所は必要で、人間の住むスペースに立ち入るな、と猫に説明しても残念ながら理解できないであろうことなどもやんわりと話した。

一番大事なことは、私は猫好きだが決して好んで「餌やり」をしているわけではなく、猫を増やさないために手術し、その個体(術後の猫)に対し責任を持ち生涯面倒をみる。猫を増やさない活動ということは、言いかえれば、「猫嫌い」な住民のための活動にもなる、ということを深夜なので、小さな声で力説した。

ご婦人は、
ご婦人「20匹って、あなた、その費用は ボランティア団体から出てるの?」

私「いいえ、この20匹はほとんど私が自費で行いました(地主さんにも助成して貰ったが、ここは話がややこしくなるから、私ひとりの手柄?にした)。現在は北区で手術助成金も出てますが、私がした時期は、まだ助成金もありませんでしたから。ノラ猫の平均寿命は3~5年ですから、手術で増やさないようにして猫を管理していけば、必ず数は徐々に減ってきます。現に手術の成果でしょうか、4年ほど前からこの近隣では子猫は生まれていないんですよ、見かけないでしょう?」

ご婦人「まあ~ 私、誤解してたわ。近所で、凄く猫の好きな方がいて(私のことよね!)、手術はしてるみたいだけど、一生懸命ご飯やって、とても熱心に世話をしてるって聴いたのよ」
って、「とても熱心に世話をしている(実際には適当ですよ~)」というのが周囲から見たらば「増やしてる(ちゃんと面倒を見てるから減らない)」と見えるんだろうな。

ご婦人「近所の人も誤解してるから、ぜひ皆さんに知って貰った方が良いわ」

私「もし、そんなお話が出ましたら、今度から誤解のないようにご説明ください。あまり知らしめると、そんなに猫好きなヤツがおるんなら、と近隣に捨て猫されたりするといけませんから、広報活動(笑)はほどほどにしてるんですよ~」

そんな会話を最後に、お互いに名乗り合い「では、おやすみなさい」と笑顔で別れた。は~、疲れた、へとへと。 あんたたち(猫)はご飯終わったけど、私はこれからなんだよぉ、お腹空いた~、本当に猫の手も借りたいんだってば。

2010年/9月某日 くどいけいこ