コラム「猫の手も借りたい」№5    1日50円

高齢の方で、猫に餌やりされている人は多い(と思う)。その中でもいろいろな方がいらっしゃるであろうが、月々の年金の中から餌代を工面して与えてくださっている方もけっこういらっしゃる(と思う)。「猫が可愛くて」とか「猫が可哀想で」とか、理由も様々だし、給餌の場所もご自宅の庭だったり、マンションの駐車場だったり、近くの公園だったり。さあ、ここで問題なのは、猫たちは生きているから、 ♪ わ~すれられな☆の~ ♪ とは歌わないし、キラーズも従えてないが(古い、齢がばれる)、当然「恋の季節」が巡ってきて、お嬢ちゃん猫はやがて「子猫」を産みます。

猫は、いわゆる「交尾」をすると、まず百発百中でご懐妊なさる。産むための「交尾」です。産まれた子猫は、ノラ猫でもしっかり給餌されてる母猫とそうでない子では、子猫の生き残る率も異なり、給餌がされてない母の子猫は全滅の時もあるのに、給餌されてる場合はけっこう育って世に出て来る。さあて、ここで問題はもっと大きくなり、そのままにしておくと、猫は増えて行っちゃう。

そこで、「そうならないためには、どうしたら良い?」と高齢の方から相談を受けると、私たちボランティアは猫が増えないように「避妊・去勢手術」をお薦めするんだが、「餌代さえやっとの思いで年金からなんとか念出しているのに、手術だなんて~、無料じゃないんでしょう??どっからお金を捻り出すのよ~」とおっしゃる場合も多い。しかし、ちょっとここで考えてみてくださいませ。

現在、ノラ猫の平均寿命は、3~5年と言われています。仮に4年としましょうか。1日1匹の猫の餌代を、1食(1日分)50円として計算し、50円×365日(1年)で、18,250円。え、1年でこんなにかかるんですよ。4年やり続けると、な、なんと、73,000円と相成ります。これを、高いとみるか、安いとみるか。まとまるとけっこうな額だな、と私は思います。5年にすると、91,250円になります、って言葉が丁寧になっちゃいました。

猫たちの避妊・去勢手術は、オスはメスの半額くらいで出来るし、メスにしても1年分の餌代で上手くやれば数匹出来るから、私たちは「ぜひに」と薦める。だって、手術しないのとしたのと、どっちが費用がかかるか比べても数ヵ月のスパンで見ただけで、結果は一目瞭然である。費用の面からだけ見ても「手術する」方が良いし、猫たちもいつもいつも健康なわけでもないから、風邪も引けばお腹もこわす。そうなったらなったで放っておけないから、薬だ、なんだと対応してやらなければならない。猫の数が増えたら増えただけ、この手間たるや、いやはや大変である。

しかし、「増えて困ってるの~」と相談に来られる高齢の方の大半が、「動物病院で手術したくても、猫が捕まえられないの~」とおっしゃる。「だから~、餌で手なずけてなんとかキャリーバッグへ、なんてしてたら、その間に3回産んじゃったの」とかもおっしゃる。確かにそれじゃあ間に合わない。

そのために、猫を速やかに安全に保護(まあ、「捕獲」ですね)出来る、「保護器」というトラップがある。これを使えば、比較的うまいこと猫を捕獲出来、動物病院で手術出来る。

「猫が可愛くて」でも「猫が可哀想で」でもどっちの理由でも餌やりされてる方、お嬢ちゃん猫がご懐妊しないうちに手術したら、猫も増えなくて、しかも全体的なコストも安く済みますから、ぜひボランティアや行政に相談してください。「手術費用」を助成しているところがけっこうありますよ。

2010年/8月某日 くどいけいこ