コラム「猫の手も借りたい」№319 ムギちゃん、バイバイ

ムギちゃんが亡くなってしまった。
7月後半、やっとの想いで保護してから、わずか1ヶ月ほどだっだ。

覚悟をしての「保護」。
当初は「7月いっぱい、保つのかな」というのが私の予想だった。

保護後、すぐに動物病院へ。
腎臓の数値が高め。なにより「脱水」がひどい。
この数値は、1~2日でなるようなそんな状況ではない、とドクター。
脱水の手当はしていただいたけど、そうは言っても長くは保たなかろうと思った。
その割には、あれだけ食が落ちていたのに、けっこう食べてくれて。

ケージの中で少しでも慣れて心を許してくれたら、次の段階に行かれるかも、と微かな期待を寄せた。

尿量が半端なく多い。
うちの子の5倍くらいはあったかも。

3段ケージの一番上に「段ボールハウス」で隠れる場所を作った。
最初はそのハウスの前に寝そべっていたけれど、3日目くらいには中に入り、その中から「家政婦は見た」状態で、硬い表情で私を見ていた。
そりゃそうだよね、15~16年もずっと信じて毎日私を待って、フードを食べてくれていたのに、保護とは言え捕獲してしまったんだもんね。

保護後はトイレもちゃんと使って、一度も鳴いたり暴れたりすることもなく、静かにケージで過ごしてくれた。
しかし、私がいる時には一度たりともフードを食べたり、トイレを使ったりしたことはなかった。

亡くなる1週間前頃、食欲が落ちてきて、2日ほどでまったく食べなくなった。
段ボールハウスに戻れなくなり、ケージの一番下にいた時はまだしっかりしていて、食べないとわかっていてもお水とフードを取り替える私に身構え、ふらつきながらも立とうとしていた。
翌日の朝、かなり息が荒く、これはいつまで保つか、と思っていたら、その日の夕方には息がなかった。
食べなくなってからは早かった。

ずっとずっと、毎日毎日、あなたと会ったね。
雨が嫌いで出て来ない。深夜でも朝方でも小止みになるとフードを持って行く。
そうすると必ず出て来てくれたよね。
私を見ると走って迎えてくれたね。
暑い夏、寒い冬は時々体調を崩したけど、投薬をしたり、食べやすいフードに替えたりしながらずっと窮地を凌いで来た。
あなたと過ごした時間は、とても充実した時間だったよ。
ありがとう、ムギちゃん。

生きている時は一度も彼女のカラダに触れることは出来ず、亡くなってやっとやっと撫でてやれた。
温もりのない、硬いカラダをナデナデ。
大好きなフードと、いつもくぐって出て来た「アジサイのアーチ」のひと枝を手折って添えて見送った。
涙が止まらない。

2025年8月 くどいけいこ