コラム「猫の手も借りたい」№304 TNR先行型 下

私どもの団体ではこの「先行型」は行わない。
例え対象地域のノラネコの多くを一気に手術しても、見守り(管理)をしないとある程度の時期を過ぎると、近隣から新たなノラネコが現れ繁殖を繰り返すことが確認されているからだ。

私の自宅周囲のシマは、TNRを始めてから20年ほどになる。
その間、私を含めた数名のボランティアで見守り(管理)を行っているので、子ネコが生まれていないばかりか、新しいネコの侵入時も様子を見ながら必要ならエサやりをし、不妊去勢手術をしているので、着実にノラネコの数は減少している。

しかしながら、だ。
なにを隠そう(隠しちゃいないな💦)私の自宅周囲のシマでも徹底的にTNRを数名のボランティアで行ない管理はしているが、残念ながら町会やご近所を巻き込めていないのである。
なんと情けない話であろうか…… でも事実、現実である。
その一番の理由はこのことで隣近所と揉めたくない、からだ。

ご近所を「増えたノラネコ」に不妊去勢手術をしてまたここに戻し、一代限りの命をみんなで見守りましょう、と説いて回ることだが、これは正直非常に難しいことであることは、今このコラムを読んでくださっているみなさまは、きっとご理解いただけると思う。
TNRを行っているボランティアも、そうでない読者の方も両方のみなさまが「そうだね、そうかもね」と言ってくださるのではなかろうか。

それによしんば、ご近所にノラネコの不妊去勢手術の話をしても、ご近所が参加できるのはせいぜい手術費用、つまり必要な「お金」を分担していただく、ということくらいしか出来ないのではないか。
いや、それでいいのだ、そうやって隣近所で費用を集めて、ノラネコの問題を解決しようと頑張った、これでまずはよかったのではなかろうか。

その後は手術をしたからノラネコが増えなくなり、減少の一途を辿るのを感じていただければよい。
もし、見かけない耳カットのないネコがいたら知らせ合う、ということでよいのだ。
しかし、しかし、私はこれさえ出来なかった。
未だにエサやりをしていると奇異な目で見られ、「ネコの好きなおばさんが 勝手にエサをやっている」というふうに見られていると思う。とほほ。

やはりこの活動は「町会」とか「団地」とかいう規模で、それを巻き込んでやっていくということが一番大切なんだな、もちろん「さらり」というほど、ぜんぜん簡単ではないけれど。
ボランティア数名で、自分の地域のノラネコ問題を解決するのも容易ではないのに、その地域外の方々が行う「先行型」ではなおのこと、ハードルが高かかろうことは想像がつく。

この活動が「市民権」を得て、近隣からもご理解をいただき、気持ちよくやれる日がくるように、私も襟を正そう。

2024年10月 くどいけいこ