コラム「猫の手も借りたい」№283 とるものもとりあえず

実家の家族が体調を崩し急遽帰郷した、とるものもとりあえず。
東京の留守宅のこと、残していくネコたちのこと、心配だけど行くしかない。

最初に、帰郷のための当日の午後便を午前中に取った。山陰の実家へは飛行機が一番早い。
え、一番高いランクのチケットしか残ってない!?
仕方ない、それしかないんだもん、と自分に言い聞かせ、それを押さえた。
さて、帰るための準備をしなくっちゃ、とスーツケースを取り出し、必要なものをボンボンその中に放り込む。
ご近所の、トラミを預かってもらっている友人にワケを話し来てもらい、ネコたちのお世話、エサやり、投薬など帰る準備をしながら引き継ぐ。本当に申し訳ないが、いつも快く引き受けてくれる。
心から感謝、ありがとうございます。

そうこうしているうちに航空会社から、フライト時間の何時間前ですよ、とメールが来る。そのように登録しているので。
何気にそのメールをみて仰天した。逆の便を取っているではないか。実家から東京に帰る便を取っていた。慌てていたからであるが、ドキンとしてからは動悸が止まらない。「落ち着け、落ち着け」と自分に言い聞かせ、だってその便じゃあどう考えても乗れない。

もう一度パソコンを開いて「解約」が出来るもんだかなあ、と心配しながらマイページにログイン、キャンセル料は取られたが(当たり前ですね)、なんとかキャンセル出来た。そのまま東京から実家へ向かう便を押さえられ、おまけに今度はお安いランクの席が取れた。この時点では残席が10席程度であったが、実際に搭乗する時には「満席」だった。は~、なんだかすれすれセーフのところで、この日は運が回っているように感じた。

飛行機は少し遅れて夕方到着、病院へ直行、家族とちょっとだが面会し担当医に話を聞き、説明を受けながら色々な書類にサインして実家へ、夜の8時を回っていた。

猛烈に寒い。山陰の実家は東京より数度気温が低く、ダウンコートを着て来なかったことを後悔した。
タクシーで誰もいない実家に帰る。真っ暗で街灯もないので鍵穴も見えない。携帯の灯りを頼りに中に入ったが、寒々としている。

暮らしなれた実家ではあるが、待つ家族のいない実家はキツい。
両親や祖父母の「暮らし」があった実家、これも月日の流れ、想い出だけの残る実家になってしまうわけで、解っていたことなのに寂しい。
それでも暖房を点けて温まると、ちょっとホッとした。

今頃、自宅では友人がネコたちのフードを用意し、ペルにはそれを食べさせながら投薬、屋外のムギちゃんは、少しでも食べやすいようにとフードをレンチンして彼女の待つ場所に出向いてくれているはず、と時計を見ながらボンヤリと考える。

生き物って本当に大変、自分で自分のことが出来ない動物と暮らすことは、常にこの「世話をする」というリスクが伴うわけである。
そんな中でも、今回は特に緊急性を要し待ったなしの状況、これも視野に入れてネコたちと向き合わなければならないことを痛感した。
人間、生きていれば色々あるに決まっている。そして事が起こる時って、決してこちらの都合では起こってくれない。
それも常に頭の隅において日々を送らなければならない。
ムギちゃんの屋外のエサやりは、数人の友人が買って出てくれた。本当にありがたい。

日頃はネコと暮らすことでどれだけ救われているか……
でも、単身者は大きなリスクを同時に抱えることになる。
万が一、ネコを手放さなければならなくなった時はどうするか考え、具体的に準備をしておかないと。

2023年12月 くどいけいこ