コラム「猫の手も借りたい」№249 「多頭飼育を考える」北区シンポジウム

6月に開催された「多頭飼育を考える」というシンポジウムのパネリストとして参加する機会を得た。保健所の主催である。

昨年春に、環境省のホームページで、130頁に及ぶ「多頭飼育対策ガイドライン」が掲載された。

飼い主さんが飼育仕切れなくなったイヌ、ネコの、いわゆる多頭飼育崩壊のニュースは、毎日どこかしらで起こり枚挙に暇がない。数十頭から百、二百と、一軒の家の中で人と暮らしていたとは思えない数のイヌ、ネコが飼い切れなくなったと、ほとんどの場合が近隣のクレームにより発覚し、行政と動物保護団体が中に入り、思わず目を背けたくなるような動物の写真とともに、その現状が私たちの胸を打つ。

飼い主さんだって悪臭の中、少なくともフードは与えつつともに生活しており、生活の質は限りなく落ちている。
その中で悪臭と汚物にまみれ、フードも満足に与えられずに過ごしている動物たちにしてみたら、飼い主のことなんて知ったこっちゃないわ、とも思うが、なんでここまでになるまで放置してしまったのか、ご近所のクレームで行政や動物保護団体が来るのを待っていたかのような状況に、手に負えなくなると放置するしかない状態に陥ってしまう、なにかがあるのだろうと拝察する。

最初は数匹だった、と飼い主さんは口を揃えて主張するわけで、一度出産が起これば、どのくらいの速さで増え手に負えなくなるか、大抵の方は理解され不妊去勢手術に踏み切られるわけであるが、一部の飼い主さんがそのまま放置し「多頭飼育崩壊」という問題に及んでしまうわけである。

さて、今回のシンポジウムは「多頭飼育を考える」と題し、崩壊になるほどの数にならないうちに解決を、を考えディスカッションする、というもの。
増えてしまう前に発見し、早い段階で対応を検討し、崩壊に至らないように各人で考えてみよう、という趣旨。現段階で多頭飼育崩壊が起こっても、その飼育動物たちを保護しいったいどうしていくかという方向性は、まだ見いだせてはいない現状がある。
どこの自治体でもいわゆる箱物(シェルターですね)に収容し、不妊去勢手術後、譲渡(里親探し)できるものは行い、そうでないものは終生飼育する、というような仕組みは整っていない。
多頭飼育崩壊が起こると、その地域の、あるいは現況を知った、動物保護団体が手を挙げ、その好意に甘えて団体に保護してもらって、なんとか目鼻がついているというのが現状である。
シンポジウムでも話題にのぼった、問題が起こった時の「窓口」は?という質問に関しては、誰もこたえることはできない。行政でも自治体でも、福祉職でも動物ボランティアでも、どこでも解決できるところはないからである。

シンポジウム参加の方々は、一般の方に加え、区議会議員、福祉職、ボランティアなど、今後問題を担って行くであろう人もいらっしゃり、大きな課題にどう向き合って行くか、考える一歩になったのではなかろうか。

2022年7月 くどいけいこ