コラム「猫の手も借りたい」№244 譲渡って

昨年の後半は譲渡に神経を使って、大変だった。
なーに言ってんの、この人。
いったい何年やってんのいい年をして、と呆れられるのは覚悟の上であるが、とにかく私は、譲渡は気を使い過ぎてしまい、クタクタになる。

TNRだって大変じゃないとは言わない。
しかし「譲渡(里親探し)」は、その何倍も大変だと思う。

自分が保護した子を譲渡するのは、まだ気が楽だが、保護主さんから依頼された案件、特にその保護主さんが初対面の方であったりする場合は、まず、保護主さんとの関係を構築しなくてはならない上に、里親さんも初対面だから、こちらとの関係も構築する必要がある。
その上、肝腎要のネコさんがいるわけだから、さらに気を遣う。

限られた条件の中でしか動けないし、私の伝え方がいけないのか、そう簡単には物事が伝わらない場合も多々あり、溜息をつきつき、こっちを押したりあっちを引っ張ったりしながら物事を伝え、やれやれ伝わった、とほっと胸を撫でおろすも、実際には伝わっていなかったのか、約束ともいえるものが守られていなかったりで、寒い時期なのに冷汗たらたらだったりするわけである。

全然知らない方の間に入って「交渉事」を進めるのは、ひたすらキツイ。

里親さんを待っているネコは、そんなこととはつゆ知らず、保護主さん宅で美味しいフードをしっかりともらい、空調の効いた適温の部屋でぬっくぬくだったり、涼しい~だったり快適に過ごせるわけで、屋外で軒(ノキ)を借りる生活からも足を洗うことができる。
そりゃあ確かに好きなところに行かれる「自由」はなくなるかもしれないが、車、縄張り争い、人から追われる、そんな危険な生活からも逃れられるわけである。

ずっとずっと痒くてたまらなかったであろう、ノミ/ダニも駆除してもらい、痒いだけでなく吸血される難からも救われる。

さて、なんとかその子に合ったご縁をと思って、探すほうも一生懸命、いや血眼になって探すわけであるが、これがそう簡単には行かないからこうやってグチになる。
我ながら小物だ。

特にネコをお迎えいただくお宅とは、どのくらいの距離をおいたらいいのか、非常に悩むところである。
そのお宅のコタツ掛けの模様まで口を突っ込むなんてことはさらっさらないが、それにしてもあまりに環境が飼育に適さない場合は、ある程度のお願いはしないとならない。
ましてや、ネコがトライアルに出てしまうと、誓約前なのでネコの所有権はまだこちらにあるわけだが、なんせネコさんは相手方のお宅にいるわけだから、さらに交渉は厄介になる。

まあ、その人のことは言ってみればどうでもいい、ネコさえ可愛がって、出来る範囲で手を尽くしていただけたらそれでいいわけだが、それがなかなか、どうしてどうして。
この辺りのサジ加減が難しく、こちらが不眠になったり食欲不振になったり。

もう、昨年は本当に苦しい日を送ったが、一件落着すると人間不思議なもので、あれだけ「もう、こんりんざい里親はやめよう、体に悪い!」と言いながらも、行き場のない子を見ると、見て見ぬ振りができない難儀な性格な私である。
年齢的に、もう何年も出来ないことは火を見るより明らか。
ぼちぼち、気負い過ぎずに挑むしかないか。

2022年5月 くどいけいこ