コラム「猫の手も借りたい」№234 クリスマスケーキ

クリスマスイブか。
今年は気が進まず、クリスマスツリーもリースも、祖母が拵えてくれたキルトのクリスマス壁掛けさえも出さなかった。おばあちゃん、ごめんなさい。

ひとり暮らしは、別に四季折々の行事を無視してもなーんにも問題ない。
正月も、節分も、お節句も、クリスマスだって飛ばしていける。
でも、もちろん日々なんの変化もないから、いわゆるメリハリってやつもない。
つまんないけど楽ちんではある。まあ、年を重ねると、色々なことがおっくうになることは否めない。

私の友人で、お子さんはいないがすべての年中行事をすると取り決め、なさっているご夫妻がいらっしゃる。すごいなあ、頭が下がる。お月見までなさって、ススキを買い求め、ちゃーんとお団子も。

このところクリスマスは、私の中ではなかなか難しいイベントではある。
それは父がイブの二日前、冬至の日に亡くなったからである。夜10時ころに亡くなり、25日が友引だったため、23日が通夜、24日が告別式という日程になり、ほとんど寝ないで応対した。クリスマスの思い出は、闘病の父の思い出にどうしても繋がってしまう。

父の看病疲れから帯状疱疹を発症し、感染症に注意が必要だった父の病室に入れなくなり、なんともいえない想いをした。これは、悔しいとか残念、とかいう言葉ではいい表すことができない感じだ。

上京した当時は、クリスマスはケーキが楽しみで、わー、色気より食い気、私っぽい(笑)
25日の夜、半額になったクリスマスケーキを買って、ホールのまま食べた。
なーに、1/3も食べればすぐに胃にもたれ、そこでストップ。
冷蔵庫に入れ、翌日の朝、帰って夜にまた食べ、27日の朝くらいまで食べたなあ。

イチゴが乗った生クリームのケーキが出てきたのっていつごろからだろ。幼少期は、島根の田舎に住んでいたので、ケーキなんてなかった(こう書くと、島根の人に失礼だよね)。
高校生ころには家庭科の実習で習い、無塩バターを使ったバタークリームのケーキを手作りしていた。
もう半世紀も前の話だ。そのころもまだ、生クリームのケーキは少なかったのかも。
時々、無性にバタークリームのケーキが食べたくなるが、それこそどこで売っているやら。

小学生のころだったな、飼っていた犬はスピッツの雑種。大昔だから屋外の犬小屋に繋がれていた。
クリスマスになると、小さな小さなケーキを買って、誰にも内緒で犬に食べさせた。
しっぽを激しく降って大喜びで「味わって食べなさい」という言葉も終わらないうちに、犬はペロッと食べ終えてしまう。
夕食が終わってお風呂に入る前の短い夜の時間、2人でクリスマスを祝った。
もちろん、犬はケーキをもらえるのが嬉しくて、その時にしか食べられないから、もっと、もっとと目で訴えてきたけど、少ないお小遣いの中から捻出したお金で買ったケーキ。親に見つかったら、犬にやるなんて贅沢な、ときつく叱られるに決まっているから、見つからないように冷や冷やしながら食べさせたっけ。

明日はクリスマス。半額のケーキって買えるかな。

2021年12月 くどいけいこ