コラム「猫の手も借りたい」№180 咬み癖解消法
久しぶりに「子ネコ」の世話に借り出された。 近くの友人が保護したという、生後3ヶ月のよく慣れた女の子である。
子ネコは友人が自宅のケージで世話をしており、友人が不在の時間帯には私が行くことになったわけである。
友人宅に行ってみて驚いた。 まあ、慣れた子で、のっけから鳴きながら洋服をつたって肩まで這い上がって来る。
これは間違いなく「捨てられた」子ネコであろう。
保護子ネコの割には珍しく健康状態良好とのこと。
おおかたの子ネコは、保護時に「風邪」「下痢」「栄養失調」などの疾患を抱えていることが多い中、この子はノミ・ダニの駆除くらいの処置で済んだ。発見が早かったのも幸いした。
さて、子ネコと一緒に過ごす。 元気で駆けまわり、寝ている時以外じっとしていない(子ネコはそんなもん)。
高い所も大好きで、体が小さいのでカーテンレールも上手に渡ってしまったり、箪笥の上から電燈のヒモ目掛けてジャンプ、、、
また、人が大好きなのでトイレもお風呂も後をついてき、トイレに関しては用を足し流そうとすると中を覗きこむので、慌てて抱き上げ「危ないよ」といちいち救出する始末、やれやれ。
そんな中一番困ったのが人の手を「咬む」行為。 人に対して攻撃している意識は一切なく、とにかく遊びたいので動く「手」にちょっかいを出すのである。
見る間に友人と私の手は、傷だらけになってしまった。
さーて困った、と頭を抱えていた頃、お陰さまでこの子を家族に迎えたいという方とのお見合いも決まり、このまま行くと「トライアル(お試し飼育)」の運びになりそうな雰囲気である。ありがたいことだ。
「咬む」という行為は、子ネコには比較的多い。 母ネコやきょうだいネコと離されるのが早かったりすると、遊びの中で覚える咬む場所や強さの「程度」を学習出来ず、「咬み癖」になってしまったりするわけである。
散々考えた末、私は「子ネコ」が私の手を咬んだ時、ネコ語で「ハー」っと叱ってみた。
子ネコはびっくりした表情をし、少し戸惑っていたようだ。
また咬もうとしたので、再びネコ語で「ハー」、今度は咬む前に止めた。
お利口さんである。
というわけで、この子は1回で学習し無事にトライアルを終え、新しい家族のもとへ巣立って行ったのである。
うちのペルも来た当初は「おなか」や下半身、シッポを触ると「かぷ」っと甘咬みではあるが、私を咬んだ。
どうしたもんかと、うちのチームの飼育担当に相談を持ちかけてもいたが、気がつけばいつの間にやら全く咬まなくなっていた。
なぜ咬まなくなったのか、つらつらとおもんぱかってみると、割と時間はかかってはいるがペルと私の間で、しっかりとした信頼関係が出来上がってきたからのように思う。
彼は私を信じ、私と「折り合い」をつけてくれたのだ。
それと、大嫌いな「毛玉とり」をしないようになったのも大きかったかも。
うちは「親ひとり子(ネコ)ひとり」なので、彼は私と暮らすよりほか方法がないのである。
それに気が付き、私に合わせてくれているように感じる。
それが解った時、私は彼が不憫で愛おしかった、、、 「ごめんね、私しかいないもんね、お前には」と思わずつぶやいていた。
私が経験した「咬み癖解消法」のご紹介でした。
2019年9月 くどいけいこ