コラム「猫の手も借りたい」№140 傷病ネコ

急に寒くなって来て、外の子たちを見守る方々はさぞやご心配と拝察する。
お問合せフォームからの相談事も、寒空のなか外で過ごしている「傷病ネコ」のことがけっこう寄せられる。

「具合が悪そう/ケガをしている」から何とかしてやりたい、動物病院で治療していただき、また【地域】に戻したいので捕獲して欲しいという内容である。
ノラ猫たちに気を配り、餌を与えたり観察したり、優しいお気持ちが本当にありがたい、と思わずにはいられない。
ありがとうございます。

さて、実際に寄せられたご相談に対し、こちらがお話出来ることは、
「動物病院さんで受診出来ても、状態が悪いと治療に長期間かかったり、場合によっては【地域】に戻せない場合もあるが、その時はどうしましょうか、ご自宅で長期の療養や終生飼育は可能ですか?」
という問いかけである。

ノラ猫たちは、体調(ケガ)が悪かったりしても我慢に我慢を重ねる習性があり、傍目で見て「体調が悪そう」となっている時は、けっこう病状が進んでいることも多く、特に高齢の猫はその傾向が強い。
ただノラ猫はノラ猫で、屋外にいて生活をしているので、長年ノラ暮らしの子は急に飼い猫にしようとしてもなかなか大変なことも多く、まったく慣れずにケージから出せない例もある。
話を戻し「ご自宅で長期の療養や終生飼育は可能ですか?」とお尋ねした時、ほとんどの皆さんは、「・・・・無理です」とおっしゃる。

次に申し上げるのは、
「では、対象のネコさんの写真を撮ることは出来ますか、携帯電話の撮影で大丈夫です。
写真を拝見すれば、ある程度の年齢の推測も出来るかもしれませんし、皮膚病や「よだれ」などの疾患だと獣医師も病気の見当が付き、受診せずとも「薬」による治療が可能かもしれませんよ」
とご提案すると、それなら出来るという方もいらっしゃり、これで多少なりとも良い方へ転換出来る場合もあるが、餌をやっていない(「薬」は餌に混ぜて与えるので)などの理由があるとそれさえも難しい、ということになり、私たちもなにもお手伝い出来ないという残念なことになってしまったりもする。

これももちろん、致し方ないことでもあると思う。
元々猫は、自らは決して「治療」は望んではいない。それは人のエゴ(言い過ぎたらごめんなさい)であるとも思う。

しかしながら、猫は生きていくための術(すべ)を知っており、例えばうちの外猫のクー(黒 ♀)は、東日本大震災の後すぐ、前足を骨折した。
最初は骨折とも判らず、様子を見ながら迷ったあげく捕獲して手術をして骨折の治療をし(コラム№22,23 うらめしや~ をご覧ください)【地域】に戻した。
性格もキツイ子なので(12年くらいフードを食べに来ますが、一度も触れません)これで来ないかと思ったが、なんのことはない元気で「ごはんー」と毎日来ます。相変わらず触れません(笑)。
何が言いたいかというと、猫は生きていく上で都合の悪いこと(手術や治療など)は忘れてくれることも多いです。

もし、あそこで治療しなければ一生涯「片足」を引きずって生きて行くしかなく、寿命も短くなったかもしれないが、今彼女は何事もなかったかのように颯爽と生きている。
その「猫の習性」を利用して治療をする、ということであり対象の子の状態が判り、ご相談者さんが心を決めてくだされば、私たちは捕獲のお手伝いをいたします。
【地域】に戻せそう、との判断があり、その治療期間中の保護先や費用を確保していただければ、私たちもベストを尽くします。

2017年11月 くどいけいこ