コラム「猫の手も借りたい」№116 ブチ

iwa teずっと以前にコラムでご紹介した「ブチ( ♂12歳)」~チームアーカイブの No.12、13をご覧ください~。
大ケガを負い屋外からピックアップ、結局右前足を肩下から切断した。
ノラちゃんなのでリリースも考えたが、足の欠損ではリリースは無理と判断、知人の個人シェルターにて暮らせる環境が整ったのでお預かりをお願いし、もう何年経ったろうか。

毎年の健康診断とワクチンは欠かさず行い、私も月2回は必ず面会し、ブチは病気もせずに元気で過ごしてきたが、ここへ来てなんと、その個人シェルターが閉鎖されることになってしまった。
先方さんもよんどころない事情をお持ちだし、これは致し方なかったが、さて実際問題困った。
うちの住宅事情も然ることながら、タマ(うちの子)は他の猫を寄せ付けず、残念ながら受け入れてくれない。
これはタマが悪いということではなく、そういう質(たち)なのであるから致し方ない。
そうこうしているうちに同室の子たちはみんな引き取られ、部屋はブチひとりになってしまった。

一緒にいた子たちがいなくなると、ブチは環境の変化を如実に感じ不安がって鳴くようになった。
しばらくは鳴いていたようだが、それも日にちが経つにつれ収まりはしてきた。 しかしブチは、ぽつねんとひとり(1匹ですね)で取り残された形となり、早くなんとかしてやらないと、と思うばかりだった。

「困ってるんだ、ブチの行き先で」とスタッフに持ちかけたところ、ブチのためなら、と預かって下さる方が現れ、胸を撫で下ろした。

準備は着々と進み、ブチをシェルターから引き上げる日程を調整し、ピックアップした際にはワクチンと健康診断、念の為にウイルスチェックや血液検査もお願いし、万全の体制で臨んだ。
心配していたようなこともなく、お陰さまでブチはすべての条件を無事にクリアし、新しいお宅の大きなケージに收まることが出来、本当にほっとした。 これもひとえに、スタッフや動物病院さん、新しい引取先の方々のご好意によるもので、感謝で一杯である。

思えば寒い冬の夜、北風が強い日で本当に寒かった。
3週間ほど姿を見せなかったブチの声を久しぶりに聴き、生きてて良かったと安堵したのも束の間、痩せ衰え汚れ切って弱ったブチを見つけた時は、痛ましくて胸が潰れそうだった。

なんとか苦労して保護したのは良いが、結局は前足を1本切断する結果になり、リリースの目処も立たず途方に暮れた。
それを思い出すと、本当にブチは運の強い子だとつくづく思う。

成猫で老境に差し掛かっているが、なかなかのハンサムで可愛いブチ。 なんとか早く新しいおうちに馴れて欲しいと願うばかり。

さて、新しいおうちでのブチの暮らしは、先住ちゃんがいるため大きなケージから始まっている。
個人シェルターでは、人とのスキンシップやコミュニケーションの機会も稀だったようで、新しいおうちでフーだのシャーだの言っているらしい。
新しいおうちの方に様子を聴くと、フードや飲水をケージに入れたり、寝床の清掃をしたり、あるいはブチを撫で撫でしたりする時は、逃げたりはないが、体が固く緊張している様が伺えるそうである。
だが、少しずつであるが、徐々に馴染んで行ってくれているようで安心だ。

基本的には前足の欠損による生活の支障はなく、最初はなかった食欲も戻って来たとのこと。

ブチくんや、ゆっくりでいいから馴れて行ってね、急ぐことはないからね。

2016年7月 くどいけいこmachi_beret - コピー