コラム「猫の手も借りたい」№109 望まれて2

Anyo kotora「望まれて」、里親さん宅に入った茶トラくん、無事にトライアルを終了し「正式譲渡」と相成った。やれ、めでたや。

それが昨年の秋のこと。 今は去勢手術も終わり、我がもの顔の茶トラくん(現在生後10ヶ月くらい)、名前は「小虎(ことら)」くんになった。
里親のSさん宅は元々、私の友人が親しくさせていただいているお宅。 ぜひ一度小虎に会いにいらして、とオファーがあり早速に友人と2人でおじゃまさせていただいた。
Sさん、Sさんのご主人(単身赴任中)と社会人の息子さん、Sさんの兄上の4人家族がお住まいの大きな一戸建ては、2年前に建ったばかりで陽当りの良い素敵なお宅。ほーんと、私が貰われたいわ、小虎ちゃん。

玄関脇のお兄上のお部屋が、彼のリビング兼、寝室。 朝早くお仕事に行かれるお兄上と共に寝起きし、食事もする。
元々猫の大好きなお兄上にと、妹のSさんがお声をかけて下さったのが今回のご縁であった。

お兄上は、就寝の時間にも関わらず私たちを迎えるため待っていて下さり、「ありがとう」とお礼を言って下さった。
里親活動のやり甲斐を噛みしめる瞬間である。

実は、Sさんと息子さんは猫アレルギーをお持ちであるが、可愛い小虎くんの魅力に勝てるわけもなく、ブラッシングしたい、遊びたいとアレルギーもなんのその、上手く接して下さっている。

たまらないのは、最初にちょっと難色を示されていた単身赴任のご主人。
お孫さんがいらっしゃるので、ご自分のことを「ジイジ」とおっしゃる。
たまに赴任先からお帰りになると、小虎くんに「どれ、ジイジと遊ぼう」などと話しかけられ、「可愛いなあ」とおっしゃるそうで、Sさん、本当にびっくり、とのこと。 なんのことにも、幸せなヤツだ、小虎ちゃん。

夕食におじゃまさせていただいたが、食べ切れないほどの美味しい料理でおもてなし下さった。
さて、小虎ちゃんは、と言うと、リビングのお気に入りの場所に陣取って、お客さん(私たち)を観察している。 小さなお孫さんが来られると隠れてしまうのに、あなたたちは何故?とSさんは不思議がられる。
考えられることは、元来猫は「小さいお子さん」が苦手である。また、お孫さんのお宅では犬を飼っていらっしゃるようで、その匂いを警戒している可能性もある。
お孫さんは小虎くんと遊びたくて手を伸ばされるが、その手の届かないところに行ってしまうそうである。そうだろうなあ、猫ってそんなもんである。

美味しいお料理に舌鼓を打ちつつ、小虎くんの写真をパシャパシャ撮影、やはり可愛い。 オス猫って、仔猫の時はあんなに可愛かったのに、成猫(せいじん)すると、急にバランスが「おじさん」っぽくなって来てしまったりする子がいるが、小虎くんはそんなことはなく、とっても可愛い(元親バカ)。 茶トラのシマや斑点がキレイに出て、みんなで小虎くんを褒め称えた。ヤレヤレ、親バカの集団だ。

しかし、ちょっと前まではまったく存じ上げなかったSさんと、こんなにも親しく話に花が咲く食卓を囲むことになろうとは、小虎くんが作ってくれた不思議な縁(えにし)である。

小虎くん、ありがとうね。

2016年2月 くどいけいこmachi_beret - コピー