コラム「猫の手も借りたい」№104 望まれて
生後4~5ヶ月の茶トラくんがトライアルに入った。 里親さんにと申し出て下さったお宅にお届けし、しばらくお試し飼育(トライアル)をしていただくことになったのである。
そもそものお話は、私の親しい友人(コラム「予期せぬ出来事」太郎ちゃんの飼い主さん)が、「私の知人から《茶トラ》ちゃんが出たら教えて、と頼まれたのでお願い」というのがきっかけだった。
その時、たまたまうちの近所に「去勢手術」を予定している茶トラくんがいた。
その茶トラくんの手術依頼があったお宅は以前、庭先に母子の猫が住み着いて困っている、と相談が寄せられたお宅であった。 私たちが避妊去勢手術のお手伝いに入り母子は無事に手術が終了し、今は地域猫としてそのお宅の広いお庭でハウスとたっぷりのフードを貰って暮らしている。 母子は、最初はご近所からもクレームになったりしたので、少しナーバスになられていたそのお宅も、手術を済まされた後はご近所からも感謝され、母子も円満に暮らしていた。
元々は動物好きなお宅で、大型犬が室内にいるため残念ながら猫たちを家に入れられない、と手術を決意されたとのことだ。 相談の窓口は奥様だったが、すぐに可愛い猫たちに情が移り「この子たちのために元気でいなくちゃ」とハツラツとされていた。 ご主人も最初はいやいやだったが、今ではフードの係はご主人で「本当に可愛い」と目を細められる。
その庭に突然、茶トラくんは現れたという。要するに「捨てられた」らしい。捨てたのは、その母子の様子を観察していた人だろうか・・・。 茶トラくんは非常に人に馴れており、追っても追ってもその場を離れず、ご夫妻は本格的に給餌をすることにされたようだ。
久しぶりに犬の散歩のご夫妻と行き会った時に「くどいさん、実はかくかくしかじか・・・」とこの経緯を話され、もう少し経ったら手術をお願い、と立ち話をした。 そうしたらば、程なくこのお話をいただいたので、これ幸いとばかりに皆で動いて「トライアル」の運びとなったのである。 今回はスンナリと進行し、茶トラくんピックアップから3週間経たないうちに「トライアル」と相成った。 こんなことは本当に珍しい。 もちろん、ご夫妻は可愛い茶トラくんにも情が移り、手放す時は涙であった。
さて、トライアルのお宅に入った茶トラくん、最初は誰でも隠れるが、彼も例外ではない。 ご家族の皆さんに出迎えられ室内に入ったが、ベッドの後ろから、棚の一角に収まりじっとしている。 環境が変わった時は無理に触らず、2~3日はそっとしておいた方が早い。場所に慣れて来ると自分から必ず出て来る。 住まいが変わると数日間食べなくなる子もいるが、彼はちゃんとうまいことフードも食べ水も飲み、トイレもきちんと使っており、一同一安心である。
里親さん宅は4人家族。ご主人は「(猫は)臭いがあるのでは」とちょっと気にされていた。猫のオシッコの臭いがするお宅をご存知だったので、ご心配なさったようだ。 元来猫はキレイ好きで、うちのタマも全く臭わないし、昨今の猫トイレはいろいろ工夫されていて、それこそ「臭わん」ようになっている。 多頭飼育などで「スプレー」があると臭いはするが、そんなことでもなければまず、臭いは皆無である。
その後ご家族から、「(ご主人が茶トラくんを)可愛いがってるのにはびっくり!」とメールが届いた。 茶トラくん、そこもクリアしたみたいね、良かった。
望まれて、優しいご家族に迎えられ、あなたは日本一の幸せものね。
トライアルが無事終了し、「家族」として迎えられる日はすぐそこだよ。