コラム「猫の手も借りたい」№98 この頃のタマ 

micky teタマは、大学病院の受診からこっち、非常に機嫌が悪く、本当に困っていた。

まあ、無理もない、体力の落ちている中遠出をし1日仕事。さぞかし疲れただろうし、それよりあちこち触られたり麻酔までされたんだもの。
しばらくは強張った表情が取れなかった。

それからは、ちょいちょい手の届かないローテーブルの下とか、押入れの奥~の方とかに身を置き、警戒ばかりしていた。

投薬も皮下点滴も嫌がる嫌がる。
いつもは必ず一緒に寝ていたが、寝室に来ない夜があった、毎日ではないけれど。

大好きなブラッシングも以前は手放しで喜んでくれたが、今は胡散臭げにブラシをふる(いつも「くしくしするよー」とブラシをふる)私を眺めていた。

いったい、どーしたらいいんだか、と悩んだし悲しかった。
一番困っているのは「投薬」。
私は、必要な薬をカプセルに入れ替え与えている。
夜のフードのあと与えるようにしているが、フードを食べ終わった頃に薬を飲まされるので、様子を見ながら私が少しでも近づこうものなら、脱兎のごとく逃げる体制をとっている。やれやれ。
それでも結局は無理やり飲まされることになるのだが、いつも「なんで?なんで嫌がることするの?」という表情で私を見る。
うちは、私とタマしかいない親一人子一人でお互いが家族だから、逃げ場もなく本当に苦労する。

タマも私しかいないのは知って(たぶん)うちの子になった。誰にでも馴れる子とは異なり、タマは基本的に私にしか馴れない。そんな状況を知ってるのに、どうして私の嫌がることするの?といつも問いかけられている気がし、「ごめんね、ごめんよ」と謝りながら行う。投薬後や寝る時の消灯前、冷ややかな表情でみつめられると、泣きたくなることもある。
仕方ないと諦めはするが、言葉の通じない彼女に説明しても無理、寂しい限りである。

ところが、ここ最近ちょっと様子が違って来た。
用事がない時は手の届かないところにいた彼女が、以前の定位置だったソファーの上に戻って来るようになったのである。
夜も寝室に来て、寝ている私のおなかの上に乗ってゴロゴロ、スリスリしたり腕枕をせがむようになって来た。
いやー嬉しい、泣けてくる(こっちは嬉し涙です)。
この間なんか、気がついたら私の左頬に自分の右の頬をくっつけて寝ており(ネコの話ですよ~)、今までもこんなことはなかったので、びっくりした。どんな心境の変化が彼女にあったのだろうか。

頑張って生きても数年であろうと思われるタマ(物理的にそんなもんでしょう)、階段の昇り降りもゆっくりゆっくり慎重になって来た。
つつがない、なんのヘンテツもない普通の日々は大切な宝物になろうとしている。
お薬と注射は我慢だけど、あとは好きに暮らしていいんだよ、タマ。

 

2015年7月 くどいけいこmachi_beret - コピー