コラム「猫の手も借りたい」№92 じんべえ 上
「じんべえ」は、【にゃんこの里親会】で里親さんが見つかったロシアンブルー(純血種)である。 私の大の仲良しの友人の実家で、お父上が生後2~3ヶ月でペットショップから購入されたオス猫だ。
友人のご実家は、高齢のお父上と弟さんの二人暮らしで、お二人とも持病があり体調を崩されることも時々あったとかで、有り体に言えば友人はペットの飼育に反対していた。
元々お父上は猫好きで、友人が実家にいた頃から猫が数匹いるご家庭だった。
ある日お父上は突然、メスの「シャム猫」を連れて帰宅され、ペットショップの店先で赤いリボンをして売れ残ってたから見かねて買って来た、と言われたとのこと。 まだ、ご両親と姉弟の4人家族の頃であった。
そのシャム猫は、何回か交配し赤ちゃんを儲けている。 母猫になった彼女は仔猫の面倒を見ないので、友人が不眠不休で母親役をし子育てをした。 猫用の哺乳瓶など、まだちまたにない時代で、友人は散々考え「目薬」の瓶、それも今みたいな、容器を押して使うタイプではなく、目に液体を点す方の反対側に小さな半円形のゴムが着いている、そのゴムを押して液体を出していた、あれ(年齢バレバレ!)。 目に点す方には小さいゴム管(どこであつらえたのだろうか)をくっつけ、生まれたてのチービの仔猫の口に入れ、授乳していた。 その猫たちは20才近くまで長生きし亡くなった後は、飼育動物は「メダカ」のみであった。
それから成人した友人は嫁ぎ、しばらくしてからお母上が他界されてしまった。 体調管理がなかなか難しい男性お二人に友人は、「自分の管理も大変なんだから、動物は飼わないでね」と話していたようであった。
5年ほど前、友人から突然電話があり、父上が猫を飼ったようだと幾分慌てた声であった。
「なんで止めないの、あれほどやめて、と言っておいたのに!」と弟さんを問い詰めたそうだが、弟さんいわく「お父さん、暑いから(夏だった)甚兵衛さん買うって言って出かけたんだよ。そしたら猫買って来たんだ・・・。 それで、甚兵衛買うって言って出かけたのに、なんで??って訊いたら、お父さん、涼しい顔で『オレは甚兵衛買って来たよ、な、じんべえ!』って仔猫に言ったんだ」
仔猫の名前は「じんべえ(甚兵衛)」であった。
続きます。