コラム「猫の手も借りたい」№82 続々・予期せぬ出来事
さて、当の太郎くんはというと、さすがに元気がない。彼に事の重大さが飲み込めているハズは毛頭なく単純に体調が悪いのであろう。
こんなに元気がないのは、友人宅に来てから初めてである。友人も勤め先を早退したりして寄り添ってくれている。そりゃあ心配だもの。
まず、炎症を抑える薬を使って様子を見ることになった。
どちらにせよ、ぐったりとまでは行かないが、結構具合いが悪い太郎を、まず辛さや痛みから開放してやらねばならない。
彼は、処方していただいた薬をお利口に嫌がらずに飲んでいて、これは非常に助かる。
投薬や注射などの処置を嫌がらない子は、まずいない。
投薬などがあまり過度なストレスになるようだとお互いが困る。
薬を飲ませようとしたらば飼い猫が咬んだり引っ掻いたりだと飼い主も困るし、飲ませるのを諦めざるを得ないようなことになると治療そのものが難しくなるからだ。
そうは言っても色々な個体があり、言葉での説明や説得が出来ない「ペット」は、子供より難儀である。
太郎を助けて下さったドクターが、入院中の太郎があまりに扱いやすいのに、驚かれていた。
「治療に協力的な子は、助かる確率も高くなる」と。
治療に対するストレスの感じ方はこれも個体差があり、いずれにせよ太郎は得な子である。
投薬の甲斐あって、ほどなく食欲が回復して来た。とりあえず「ほっ」。
これまでは肥満傾向にあったため「減量サポート」「満腹感サポート」を献立の中心に置いていたが、今後は「消化器サポート」が中心。
食欲が回復してくると、何でもよく食べまする、ハイ。
年内いっぱい投薬を続けた結果、症状がとれたので投薬を止めてみることになったが、投薬中も受診しながら主治医と相談を重ねた。
主治医は、当然だが「悪性」なら一刻も早くとの見解。
そうは言っても「悪性」でない可能性もあるわけで、開腹するのには非常に勇気が要った。
相談だけ(診察はしないで)で診察室を訪れたこともあった。
エコー検査ではこれ以上の判断は難しいとのこと。
うーん、どうしたもんだかな・・・
そうこうしているうちにエコー検査の結果で、患部が少しずつではあるが小さくなって来ているとのこと、投薬を止めても当人の症状が落ち着いているので、もう少しエコー検査で様子をみましょう、ということになって来た。
それ以後、1ヶ月に1度の検査をする度に、祈るような気持ちであった。
思えば、瀕死でいたノラ世界から助けあげた。
もちろん、あのままならとっくのとうにこの世にはいなかろうと思うが、そんな経緯(いきさつ)があっても元気になると外に行きたがる子も多い。
しかし、太郎はまったくと言って良いほど「外」には行きたがらなかったし、眠っている時も常に警戒しながらであった。ちょっと大きな音がすると、びっくりして飛び上がる(本当に30センチは宙に浮く)彼を見た友人は「太郎はノラ時代、余程怖い目に遭ったんだねえ・・・」と不憫がった。
そんな彼も数年経ち、ようやくリラックスして眠れるようになった。
その矢先の発症に、「なるようにしかならないが、それでもなんとか助かって欲しい」と友人と話した。
お陰様で、発症からそろそろ半年、体重も上昇傾向にあり、主治医からは「悪性のものの確率はとても低くなりましたね」と言われ「やれやれ」である。
油断は出来ないが、少なくとも悪い方向には行っていない。
太郎はまた、元のオマヌケちゃんである。
このまま平らな日々が続いて行ってくれたらな。
2014年5月 くどいけいこ
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