コラム「猫の手も借りたい」№67 俳優さんと猫

Beret te 20130915私が、猫に関わるきっかけのひとつとなった出来事がある。

それはすでに30年ほど昔(年齢がバレる)の、私が若かった頃の話である。
その頃私は劇場で働いており、その時に出演されていた男性の俳優さんが、ある日3匹の子猫を抱えて現れ、こう言われた。

「うちのペルシャ猫が外でつくって来ちゃった子猫で雑種なんだけど、誰か貰ってくれないかなぁ」
もう、とても素敵な俳優さんが、芝居の扮装のまま子猫を抱っこされていたので、それはそれは素敵で、思わず目がハートになった(それは、子猫にか?俳優さんにか?両方にであった)。

子猫たちは生後2.5~3ヶ月、ペルシャのおっかさん(俳優さんはこうおっしゃった)から生まれたので、いずれもふわふわのロングヘアで、キジトラ、キジシロ、クロの3匹であったと記憶している。

私は残念ながらアパート住まいだったから譲り受けることは出来なかったが、譲り受けたスタッフへの「飼育の仕方」の注意や、その子猫の性格・特徴など個別のデータを俳優さんから一緒に聴いた(気がする)。
そんなことがあってか否か、その俳優さんとは親しく話をするようになった。

彼は、猫が好きで家族でずっと飼っており、その頃のことなんで(30数年前ですね)避妊手術も今程受けさせる人は少なく、おまけに猫たちは屋外にも出ていた(磯野タマちゃんですね)。
一戸建ての住宅だったため、猫が家の中から庭へ出入りするのを見た人がいたであろう結果、庭に子猫が捨てられたこともあったという。

余談だが、早朝、犬の散歩の女性が俳優さん宅の庭に入り込んでしまった愛犬を追いかけて入ったら、たまたま庭にいた俳優さんと鉢合せ、俳優さん宅と知らないで入ったその女性が、仰天してしまったというエピソードはマネージャーさんから伺った。

その後も、他の劇場で会ったその俳優さんは、劇場入りするのに小さい生後  1ヶ月ほどの子猫(茶白だった)を肩に乗せていらした。理由を訊くと、その子猫も自宅庭で保護した猫ちゃんで、楽屋で面倒を見ている、ということであった。たぶん、捨てられたのであろう。

その時もチビ猫ちゃんが可愛くて可愛くて、やられた!って感じ。
楽屋で話している俳優さんの傍のチビくんの仕草が愛らしい。時間の経つのも忘れ、一緒に遊んで気がつくと「猫って可愛いだろ」って彼の思う壺。

それからは、ことある毎に猫が気になり、一緒に暮らしてみたいな、と思うに至った。

それから30数年、一緒に暮らすだけでは飽きたらず、「猫の手も借りたい」とボランティアで猫に関わるようにまでなった。我ながらびっくり。

今度彼に会ったら、お礼言おう。

 

2013年9月 くどいけいこ