ｺﾗﾑ「猫の手も借りたい」№50　ｷｼﾞﾄﾗ獅子舞一家

コラムを書き始めた頃にご紹介したキジトラ母子「獅子舞ちゃん一家」(ｺﾗﾑ№3,4「ルーツといきさつ上下」をご覧ください)。
一家の母猫が痩せ細り、肉が削げ落ちた顔は輪郭ばかりが目立ち、その四角い顔が「獅子舞」のお獅子のように見えたので、そう呼んでいたキジトラちゃん。その彼女も１５～１６歳になるようだが、近所の地主さん宅の庭で元気に毎日を送っている。

子供たち、オス２匹とその前に生まれたお兄ちゃんも元気でおり、今はこの４匹で「一家」を構えている。

このお兄ちゃんには「チョビちゃん」という兄弟がいたが、この子は片目が見えなかった。地主さんに聴いたところ、今は引っ越したが、近所の心ない住民にパチンコで撃たれ片目を失ったようである。この「住人」は、夜になるとキラリと光る猫の目を標的にパチンコで狙っていたようで、以前は他にも何匹か目に障害を持つ子がいたらしい。なんともはや惨い話しである。

チョビちゃんは私が最初に遇った時すでに、酷い猫風邪を引いて鼻から血膿を流しており、夜暗い中で見ると鼻の下がテラテラと光っていた。あまりに可哀想で治療してやりたいが「ノラだから」治療が出来ないのでは、と心配し悩んだ末に思い切って保護し病院を受診、なんとか診察していただいた。やはり「猫風邪」との診断で、投薬で改善されて来た矢先に不運にも交通事故で亡くなってしまった。

チョビちゃんは、引いた猫風邪が治り切らず慢性化していた。オスながら、獅子舞ちゃんから生まれた弟妹子猫たちの面倒をそれはそれは良くみる子で、致し方ないことだが風邪は子猫にも感染した。

チョビちゃんの弟妹３匹のうち、１匹のメスにうつり、この子は突然、道端の電信柱の陰に横たわっているのを見つけドキンとした。チョビちゃんが交通事故で他界したすぐ後のことである。

この女の子、すぐに保護しそのまま動物病院へ。やはり「猫風邪」で、入院と相成った。
他の兄弟２匹は元気で外にいることだし、この子もノラちゃんだから回復したらば元の場所に戻そうと考えていたが、なんと回復するにつれ「スリスリ、ゴロゴロ」、病院のスタッフに懐いてしまった。担当のドクターからも「頼むから地域に戻さないで」とお願いされ、だったらあなた、貰ってくれい！と思うが、考え直さざるを得なくなった。私だって鬼でもなけりゃ蛇でもなし、確かにこんなに馴れた子を外に戻すのは気が引ける。結局、退院後はとりあえずうちに連れて帰ってきた。

私はフルタイムで仕事をしているので、留守中室内で危険のないように大きな「ケージ」に入れて里親さんを探すことにしたが、彼女はこのケージの中から前足を伸ばし、出して―、遊んで―と鳴きながらねだる。遊びに来た友人が「この、火にかけっぱなしのピーピーやかんみたいな、のべつ幕無し鳴く子はなに？！」と言ったので、「ピーピー」と仮の名が付いた。

ピーピーは、総キジトラで綺麗な毛並み、女の子らしい優しい顔立ち、まあ甘えっ子で甘えっ子で、ノラ猫だったのが嘘のよう、初めての人でも平気である。母さんの獅子舞ちゃんの性格を受け継いだみたい。可愛い女の子で、その後生後４ヵ月で里親さんが見つかって、今は「くるみちゃん」という。

くるみちゃんが貰われた飼い主さんＡさん宅は当時小学生のお嬢さんお２人とご両親の４人家族。第一夜からピーピーはお嬢さんのベッドに潜り混んで一緒に寝ていたようで、みなさんが本当に可愛いと目を細めてくださる。Ａさんは今でも、年に何回かくるみちゃんの近況を送ってくださりありがたい。６歳（2012年11月現在）になったくるみちゃんの写真を見ると、母さんの獅子舞ちゃんにそっくりで驚かされる。

地主さん宅の庭にいるファミリー４匹も、よほど居心地が良いのか、１匹も欠けることなくのーんびりと日々を送っている。

天国のチョビちゃん、みんな元気だから安心してね。

２０１２年１１月　くどいけいこ