コラム「猫の手も借りたい」№36 わたしたち、何者?下

保護器を見たAさんは「え、そんなもんで捕まえるの?!! 絶対に無理よ、入らないわよ」とおっしゃった。

「なんの根拠があって、そのように『否定』されるんですか?」とお尋ねしたいところだが、そうもいかない。ニッコリ笑って「まあ、とにかく仕掛けてみましょうよ」と促す。

仕掛けるフードは、手術を控えているので、ほんの少しである。ネコの胃の中は空っぽにしたいのが本音、だから大概こちらから見繕って持参する。

ところがAさん、「この子はこれで」と缶詰を開けようとされるので、待ったをかける。とりあえず、私たちが用意したフードでやってみましょう、と持ちかける。缶を開けてもほとんどが無駄になるからである。冬場はともかく、夏場はウエットフードの痛みは早いからもったいない。ドライフードだと、捕獲後に残った物がばらばらと散らばり始末が悪い。

早速、保護器の準備をし、ネコの居る場所に仕掛けた。Aさんは、「掛からない」と思っていらっしゃるから全然乗る気ではなく、この雪が降る寒い中こんな無駄なことして、と言いたげだったので、ちょっと離れたところで待機していただいた。待つこと3分、静かなので様子を見に行ったところ、ネコは保護器の入り口付近の「おとり餌」は食べていたが、肝心の一番奥の分までは食べていなかったので、再度「おとり餌」を置き直し、もう一度トライ。

Aさんは一度私たちが保護器を見に行ったところで、ほーらごらん、この子が入るわけないわ、といったお顔であった。

再トライして待つこと数分、「ガシャン」という音と共に、ネコの捕獲に成功した。

捕獲出来た、とAさんに伝えると、保護器の中を覗き込んで確認し、びっくりした様子で「あなたたち、いったい何者なの?」とおっしゃった。こんな時はいつも「わたしたちですか?ただのボランティアですよ」とお応えすることにしている。

その後、保護したネコをお預かりし急遽予約し直した動物病院に車で運んで無事手術、麻酔が覚め術後も問題がないとのことで、夜にはネコをAさん宅まで運んでお返しした。捕獲が成功してからのAさんの態度は一変し、ひたすら「ボランティア」に感謝の気持ちで接して下さった。有り難いことである。

大概の皆さんが、保護器を見ると「ネコはこの金属のカゴでは捕獲できない」とおっしゃる。うちの近所のMさんの時も同じ反応であった。

Mさん宅の捕獲予定場所は、門扉から玄関までのほんの1.5mくらいの短いアプローチしかなく、またネコもちょっとシャイなタイプだったので、ここで私たち見知らぬ者がいきなり保護器を仕掛けても、それこそそのまま現れない可能性もあるなと踏み、Mさんにお願いしフードを仕掛けた保護器を置いていただいた。「掛からない」とお考えのMさんも浮かぬ顔だった。

さて、結果はどうだったかと言うと、置いてすぐ、Mさんが見ている前でものの1分もしないうちに捕獲でき、Mさんもびっくり仰天!その後は私たちに「感謝」のまなざしを注いで下さったのであった。

 

2012年/2月某日 くどいけいこ