コラム「猫の手も借りたい」№260 師走
師走だあ~、寒い。
夜のエサやり時間に外に出ると、まるで冷蔵庫の中にいるみたい。心底、震えるほど寒い。
外にいるネコたち、冬越し出来る「ネグラ」がないと、危険だ。
夏場から秋にかけては、オーバーな話、どこにいても過ごしていかれるが、冬になった時の居場所の確保が命にかかわる。
そう簡単にネコが隠れられる居場所があるとは思えない。ネコ同士のナワバリもある中、縁の下や物置、人が近寄ってこない屋外の色々な物が重なって置かれているような、ちょっとした隙間などに、ひっそりと隠れているみたいだ。
どの道、人がこしらえた「空間」にネコはいるようだ。
この辺だな、と大体の見当がついても、絶対に見に行かないようにしている。不用意に近づいただけでその「ネグラ」を奪ってしまいかねないからである。
ネコがせっかく見つけたネグラだって、いつなんどき奪われてしまうかもしれない、不安定な場所でもあろう。
以前、よそのお宅の自転車置き場の片隅に置いてある、壊れた本棚の中をネグラにしている子を見たことがあった。
見たとたん、寒そうなその場所が脳裏に焼き付き、その夜は寝付けなかった。
過酷な条件で生きている、飼い主のいないネコたち。
もちろん、温かい場所で過ごしたことがないから当人(ネコのことですよ)は比べようもなく、与えられた条件の中で懸命に生きているネコたち。
でも、可哀想、と思うのは人の目線だと私は思っている。
飼いネコに出来る子は、そうするのもよいが、そうもいかない子は、給餌をしながら見守っていくしかない。
冷たいフードは温め、量もたっぷり用意し食べさせる。食べることは生きることの基本だから。
食べ終わって満足そうに、ペロペロと舌なめずりしながら闇に消えていくのを見ると、今日も一日終わったね、と独りごとを言う自分がいる。
今の場所でムギちゃんの給餌をして2年ちょっと。ムギちゃんが食べている20分ほどの間、私は道端に立っているのだが、その時に必ずと言っていいほど自転車で通り過ぎる女性の姿を見ていた。
そのうち、会釈程度の挨拶を交わすようになっていたが、その女性と偶然に動物病院でお会いした。
その方は、お話を聞いてみると、川土手へネコの給餌に行くのに毎日、自転車を走らせていらっしゃるとのこと。
そうだったんだ~、その方は、私がムギちゃんのために給餌をしていることは薄々気が付いていた、と言われた。話を聞いてびっくり、不思議なご縁だった。こんなこともあるんだな。
ムギちゃんの給餌は続けられているが、今までは空き家の中で誰にもジャマされずじっくり食事出来たのが、道端ではゆっくり食べられないので、右往左往しながらだが、それでもなんとか給餌が出来ている。
ありがとね、ムギちゃん。