コラム「猫の手も借りたい」№239 災害時のペットの避難 上

最近「災害時のペットの避難について」というセミナーに、リモートで参加する機会に恵まれた。
大変参考になった、と言いたいが参考になったと同時にたくさんの課題も突き付けられた、というのが現状である。

人のために設けられている「災害時支援ボランティア」というのがあり、実は私はその登録をしているので、災害時には消防署に合流し、その指示にしたがって人命救助の活動を行うという立場にある。
そんな中で、私は動物ボランティア活動もしているため、基本的にペットとの「同行避難」という点においても気にかかっているが、うちのペルにしたって、避難所でケージ内で単体でいられるのか、ということになると自信はない。
ずっと、おぼろげにどうしたもんか、と思ってきたが……、まあハッキリ申せば考えないようにしてきた、というのが本音である。

正直、もう「飼育の仕方」自体を考え直さないとならない気がしてきた。
まず、避難と言っても災害の種類や度合いによってもかなり異なる、ということである。

たまに聞くが、住宅、道路工事などで発見される「砲弾」除去のために、一時避難を余儀なくされることがあるが、百歩譲ってそれならば、こう申してはなんだがペットを自宅に残して人だけ避難ということも可能であろうと思う。
ところが、例えば「水害」で自宅が水に浸かるなり水没するなりの災害なら、これは同行避難の必要も出てくる。
ましてや、東日本大震災時の福島のように、放射能による避難を余儀なくされた時、自宅に置いて避難したペットを連れに戻ることもできずに、多くのペットが命を落としたり、あるいは放置された結果、無人の街でその多くが飼い主を失うことになった。

熊本の地震の時は、割れたガラス戸から逃げたネコや犬の行方を探す飼い主が、SNSを通じて助けを求めたことも知られている。

一番問題なのは、避難所で人とペットの避難場所が分かれてしまうことで、ペットはペットの避難場所で、ケージで過ごさせられるという現実があることかと思う。

健康状態に問題がなかった子であっても、環境が大きく変わったことのストレスが引き金となり、健康を害する結果になることは飼い主なら誰でも容易に想像できる。
うちの子は、とてもフレンドリーで誰にでも抱かれるが、それでも自宅から移されたストレスは相当のもので、いったいどれくらい耐えられるもんだか……、と心配になる。
ペット用の非常持ち出し袋もフードや薬を入れて持ち出せるように、とセミナーでアドバイスがあったものの、人用のそれ、またペットを連れて(抱いてか、背負ってか、キャリーに入れてか)だと、それだけでも結構な量で、さーて自分の分はどうやって持つんだ、と考えてしまう。

また、数匹いる場合には、どうやって連れ出すか今から考えておいて、とのこと。確かにそうだが、家族が外出中だったりしたら、やはりひとりでその任を背負うことになるわけで、考えれば考えるほど、腕組みしてしまう。

私どもでネコさんを譲渡する際には、避難場所のケージで隔離されたペットのことを考えて、ワクチンの接種と、ケージに少しでも慣らしておいて、というアドバイスはさせていただくものの、基本的に人見知りの傾向の強い「ネコ」というペットに関しては、考えあぐねてしまう現実がある。

地震、水害など、いつ襲ってきても不思議はない昨今、避けて通れないところまできているのでは、と思ってみても、じゃあこうしよう!と具体的な案も浮かばない。はあ、困った。

2022年2月 くどいけいこ