コラム「猫の手も借りたい」№155 脱走について

年に何回か「うちのネコが脱走しました。なにか情報をお持ちではありませんか?」というお問合せと相談が寄せられる。
「いつもなら、そこのソファで気持ちよさそうに眠ってる時間なのに、いったい今、どうしているのか、、、」と、いてもたってもいられない衝動に駆られ、後悔ばかりが頭をもたげる、など心痛な心境をつづられている内容のメールが舞い込む。

ネコさんも、最初は好奇心で飛び出したり、あるいは何かのはずみ、例えば家族が気が付かずにベランダに取り残されたなどの状況になると、家の中でしか暮らしたことのない子は屋外を知らないので、自分や家族の匂いのない場所に行くと、どうしていいか判らなくなり、パニックになるようだ。

自分の体を隠せる、少しでも安全な場所を見つけ、そこでしばらく(1週間程度)はじっと動かない、ということが多いらしい。

私の知人で運よく発見した人は、あちこち八方手を尽くして探したにもかかわらず、失踪4日目にしてふと見ると自宅と隣家の壁と壁の間にいたらしく(なんか変な表現ですいません)バスタオルでそうっと保護したそうだし、もう1件は、自宅のお隣の物置に10日ほどいたらしい、、、
というのは、何度も何度もその物置は探したらしいが、見つけられなかった。
その物置で発見出来たので、結局動かずに内部の入り組んだ棚の上の方にいたっぽい。いや、そうとしか考えられない、とのこと。

そのネコさんの性格によるところも大きかろうが、自分の匂いのない屋外などに行ってしまうと、身の危険を感じるのであろう、とにかく「じっと」動かずに次の行動に移る機会を待っている、といったところか。
飼い主さんは、このじっと動かないで遠くに行ってしまわない期間に、なんとか探し出せたらラッキーであると思う。
裏を返せば、ここで発見できないと、捜索範囲を広げざるを得ない状況になると思われる。

北区内を走る大通り「北本通り」。
片側三車線の大きな道路だが、探しているネコさんがその大きな道路を、反対側に渡っていた、というケースもけっこうあった。
こんな危険な車通りの多い場所は渡らないだろう、と道路の反対側を捜索範囲から外していると、意外や意外、捜索範囲から外した、道路の反対側で見つかることもあるので油断は出来ない。

ネコさんの毛色など「特徴と呼べるもの」は、黒・白・茶・グレー、縞くらいか。
ロングヘアか縮れているか、他には尻尾の形くらいで、犬と異なり大きな解りやすい識別要素は少ないし、大きさもそんなに違わないし。
だから、言い換えればネコさんは「個体の特定」が難しい。

昔、迷いネコのポスターを見かけ、そっくりな子が近所にいたので、慌ててポスターの飼い主さんを呼んだことがある。
ずいぶん探していたそうで、かなりの日にちが経過しているため、よほどの特徴でもない限り特定が難しいらしく、その飼い主さんは首をかしげながら「そっくりなんだけど、、、、なんとなく違うような」と帰って行かれた。
そんなにそっくりで、慣れてる子なんだから、この子でもいいじゃん、とか私、思ってしまったほどでした。

それは冗談ですが、やはり飼い主さんはしっかりとその子の特徴を捉えていないといけない、ということだ。
日に日に体重が落ち、汚れてくるので飼い主さんでも迷うこともあるらしい。
時間の経過とともに、ネコさん側も飼い主さんの記憶がおぼろげになるらしく、見つけたけれど近寄れない、となることも多く、捕獲器での保護を依頼されるケースもある。

さて、お互いが辛い、悲しい目に遭わないようにするには、やはり日頃から「脱走」を想定し、備えを怠らないことが大切ではなかろうか。

まずは脱走防止に、工夫を凝らす。
常に「安否確認(オーバーですが)」をするに越したことはない。

それから首輪。
「首輪」があるとないとでは大違い。なにより個体の特定が出来る。
首輪は引っかかると首を吊ってしまったりの危険もあるので「切れるタイプ」で良いと思う。
首輪には必ず電話番号を入れておくこともお薦めします。

写真も撮影しておくのも大事です。
一緒に探して差し上げたくても、写真もないのでは「手分け」することも出来ない。

本当に、飼い主さんは一生懸命です。
これを読まれた方、万が一を考え「備え」をお願いします。

そして、飼いネコさんの帰りを待ちわびていらっしゃる方、1日も早いご帰還を願うばかりです。

2018年7月 くどいけいこ