コラム「猫の手も借りたい」№154 うちの子に限って

このところ、割とご年配の方からの「子猫の里親さん探し」のご依頼があり、対応におおわらわであった。
2件、全部で6匹(1匹と5匹)。
幸いにも「5匹」の方は、ご自分たち(数人で頑張っていらっしゃる方々)で探されたようで、結局こちらで代行することはなくて済みそうだ。
もう1件は、ポスターやチラシにての里親探しを展開し、なんとかトライアル(お試し飼育)に出たばかりである。
これで、トライアルのお宅が「ぜひに」とおっしゃって下されば、晴れて譲渡が決まるわけで、頑張れ、子ネコちゃん!というところか。

ご年配の方だから、というわけではなかろうが、みなさん、「私が世話をしているのだから」というお気持ちも強く、「うちの子に限っては大丈夫」と思われがちで、何度かお願いをさせていただくことになってしまう。

大概、依頼主さん宅におじゃますると、玄関内でお話しすることになるが、その時は必ず「カギ」をかけて玄関のドアが開かないようにしてからお話したい。
ここで、ネコたちに脱走されたら水の泡である。
しかし、よそ様のお宅の玄関のカギを勝手にこちらでかけるわけにもいかず、まず断ってからにしようと思うが、それより先に子猫ちゃんを抱っこして連れて来られたり、先住ネコちゃんが走り出てきたりするので、注意に注意を払う。

せっかく「お見合い」が決まりお迎えに行った矢先に子ネコに逃げられたとか、キャリーバックに入れようとしたら感づかれ、大捕り物になったなどというケースも聴いたことがある。
油断は禁物で、お見合いが流れてしまったり、日延べも考えなければならないから、申し訳ありませんが、こちらがお願いした通りにしてください、と念を押すことになってしまう。
本当に失礼で申し訳ないが、こちらはたくさんの子ネコ、ネコを譲渡しているので、経験に基づき事故のないようにを心がけている。

動物病院さんの待合室でも、待っている間にネコちゃんをキャリーバックから出して膝に抱いたり、チャック付きでないバックで連れて来られたりと、もうハラハラすることも多い。
私も動物病院さんへの通院歴は長いので、そこから「するり」と飼い主さんの手をかいくぐり、屋外へ逃げてしまったケースも少なからず存じ上げている。
ネコは犬と違って、リードでの指示が利かない上に、どう動くか正直解らないことがあるので、くれぐれも注意していただきたい。
でも、飼い主のみなさん、「うちの子に限って」と当然思っていらっしゃるに違いない。

いつだったか、屋外で行っていた里親会の開始前に、エントリーしていた子ネコの顔がちょっと汚れていたので、ウエットティッシュで拭こうと、子ネコを抱いてケージから出した。
よく馴れた子で、ゴロゴロいいながら私に体を預けていたが、近くを小学校低学年くらいのお子さんが通りかかられ、いきなり「キャー」と興奮した声を上げられた。
とたんに子ネコが豹変し、怖がって私の手から逃れようとし、爪を立てたり咬み付いたり。
ここ(屋外)で子ネコを放したら、二度と捕まらないかも、と私は咬まれたまま近くの建物の中に走り込んだ。
仲間が慌ててキャリーバックを持って追いかけて来たのは言うまでもない。

建物の中で、なんとか子ネコをバックに移し、はー、やれやれ、痛い思いをしたが、身に染みる出来事で、本当に良い経験になったし、脱走という事故にならず良かったと心から思った。
みなさん、「うちの子に限って」と過信は禁物ですぞ。

2018年6月 くどいけいこ