コラム「猫の手も借りたい」№57 餌をやること

うちのご近所で、猫への「餌やり」のことで揉めている。困ったことだ。

ご近所で給餌をしていた女性が、たまたま会合を開いていたこの地域の人々に咎められ、会合の場で吊るし上げられたらしい。「避妊去勢手術を自費ですべて行い、正当な給餌をしている」と何度も訴えたとのことだが、がんとして受け入れられず「餌をやるな」の一点張りだった、とのこと。

私も「飼い主のいないネコ」に避妊去勢手術を施し、給餌(餌やり)しているので、他人事ではない。

地域(区や町)によって行政の広報が少なかったりする場所は、実際「正当」な餌やりは認められていると知らない人がけっこう多い。だから、相変わらず「餌をやるな!!」「(ネコを)保健所に連れていくぞ!」と叫ぶ人が後を絶たない。確かに不当な餌やりで迷惑している人が叫ばれる場合もあろうが、餌やりを見ただけで事情も確かめず「やるなー!!」と叫ぶ人もまだまだ多い。
給餌者は女性が多いので、怒鳴られると身の危険を感じることも少なからずあろうかと思う。なぜ、冷静に話せないのだろうか。頭ごなしに「やめろ!」と言うのは本当に大人気ない。

そもそも私は、猫に餌をやらないで猫の数を減らそうと考えることは、このボランティア活動に参加するずっと前から疑問に思っていた。

人が出す「生ゴミ」がある以上、猫はいくら故意の給餌を止めても、絶えることはないだろうと考えていた。だから条例で「不当な給餌でなければ認められた」と知った時、なんと良い方向にノラ猫の扱いが動いたものかと思った次第だ。

そうは言っても、ノラ猫に避妊去勢手術を施し給餌をする、いわゆる「地域猫活動」は、まだまだ浸透せず認知度、理解度は決して高くはないと思う。先程も触れたとおり、取り組んでいる行政にもよるが、やはり予算等に限りがあるので十二分の広報が出来なかったり、手術の助成額も十分とは言えない地域も多いようだ。
それでも、この活動を支援している人々やボランティアは、手術、給餌とも相当な資金や手間を費やし、時には咎められたり、パトカーを呼ばれたりしながら日々頑張っている。

いつも思うことは、猫を捨てた人に向けられなければならない非難が、給餌者に向けられる現実がある。正当な給餌者は、とにかく猫が増えないように、手術をした猫が一代限りの命をまっとうできるように願って、365日世話をしている。
それを、「お好きですね」「おひまなんですね」などど言う人は何気ない一言だとは思うが、言われる方はいい気持のものではない。近所の人であれば尚更で、「私の努力があるからこそ、この地域で猫が増えず騒動も起きないのよ!」と思わず言い返したくなるが、ごくりと言葉を飲み込む日々である。

あー、本当にこのストレス、いつなったらなくなるのかな。

 

2013年3月 くどいけいこ