コラム「猫の手も借りたい」№45 アルとヴェガ 上

ロシアンブルーMIXの兄妹、昨年(2011年)7月7日の七夕に保護したので、この名がついた。

生後約3カ月、ノラ猫の彼らは駅前の交番などでフードを貰っていた。そのいきさつは  「コラム №2425 事情聴取 上下」をご覧ください。

2匹とも多少の尻尾の曲がりはあったものの、見た目は全身ブルーグレーで「ロシアンブルー」そっくり。密集した単色の毛並みが美しかった。

2匹の母は、これまた綺麗な「ロシアンブルー」。この母から3匹の子猫が生まれ、うち  2匹がこの兄妹。子猫3匹ともMIXだが「ロシアン」の特徴が色濃く出ているので、恐らく母は純潔種ではないだろうか。たぶん以前は飼われていたであろう母猫だが、まったく触ることが出来なかった。母と子猫1匹は程なく姿が見えなくなり、2匹の子猫が残ったそうだ。

夜中10時を過ぎると姿を現すこの子猫たちに、駅へと行き交う人たちは「可愛い、きれい!」と興味を示す方も多かったようだが、なんせ手を伸ばしても捕まらない。

見かねた人から連絡があり、その方の依頼で「保護」と相成った。

夜中の保護だったため、翌朝動物病院へ。健康診断をしていただいたが、鳴くわ、唸るわ、暴れるわ、野獣そのもの。体重などから「生後3カ月」を越していると判り、ひゃー、慣れるかいね、と心配した。大きい方がオス、あとで保護出来た一周り小さい方がメス、とのこと。2匹とも風邪も引いておらず、健康状態はすこぶる良好、なんことにも良かった。

慣らしていただくために仮里親さん(Kさん)宅へ。あらかじめお願いしてあったので、  2匹を別にする「ケージ」を用意して待っていてくださった。ケージを別けるのは、一緒にしておくとお互いを頼ってしまって人に慣れにくい場合が多いからである。

Kさん宅でいただいた名前は七夕の「牽牛・織女」にちなんで「アル」と「ヴェガ」。また、よい名前を考えてくださったものである。

ロシアンブルーは人気が高い。MIXとは言え里親さんが見つかるだろうと保護主さんも私も思った次第である。ところがどっこい、これが意外や難航した。なかなか慣れなかったのである。

最初は別々にケージの隅っこでうずくまっていた2匹だったが、男の子「アル」は比較的早く慣れてくれて、3~4日でケージから出せるようになった。

最初はハンガーストライキだったが、置いておいたドライフードがいつの間にやらなくなり、そのうち「おくれー」っと催促が始まった。そうなると食欲旺盛になるのに時間はかからなかった。

世話をして慣らしてくださっているKさんはもちろん、Kさんのお孫さん(小学生)たちとも仲良くなり、遊べるまでになった。ブラシをかけてやると、グレーの毛並みは銀色に輝いた。

その後アルは、楽器をやっていらっしゃる方が「是非に」とおっしゃってくださり、早速里子に行くことが決った。

新里親さん宅では、いったん「リセット」されることを見こして、またケージの中からの出発である。その方が新環境にも早く馴染む。2~3日でケージを出て、最初の頃は、昼間ずっと押し入れで寝ており姿が見えない。居るのかな~、と「アールくん!」と呼ぶと押し入れの奥から「にゃー」と応える賢い子。そう、アルは新里親さん宅でも「アル」とそのまま呼んでくださった。

そのうち、ご家族の肩には乗るわ、夜は川の字で寝るわ、最初は来客だと隠れていたが、今では「どれどれ、僕がいないとダメでしょう!」とお客様にもお愛想するまでになった。

水遊びが好きで、気にいったおもちゃを水の中に浮かべ前足でぐるぐる掻きまわしたり、器の外へ出したりまた入れたり。遊びが終わると大事な自分のおもちゃはちゃんと自分のカゴにしまう、という賢さで、みんなびっくり。

毛並みの良さは相変わらずで、「ベルベットのような手触り」とメールをいただいたりして、やれやれ良かったわいな、と胸を撫で下ろした。

 

問題は「ヴェガ」。

 

続きます。

 

2012年/7月某日 くどいけいこ