コラム「猫の手も借りたい」No.195 ひばり と ツバメ

ひばり は、いつ頃からだったろうか、帰省して早いうちから見かけるようになった。
どのくらい距離があるんだろうか、空の上で賑やかにさえずっている。
見事なホバーリング。
見上げると春の青空、なんと暖かい風景であろうか。
地球汚染を忘れるような、幼い頃からなんら変わっていない、ふるさとの景色である。

そうしているうちに、ツバメ を見かけるように。

鋭角にスラリと伸びた、2本の尾。「燕尾服」とはよく言ったものだ。
遠くから見ても、ツバメは尾の形に特徴があるため、直ぐに見分けられる。
ツバメが飛来すると「田植えが近いなあ」と私は思う。
耕された田に水が張られ、その上を低くスイーっとツバメが飛ぶ。

巣作りが始まり、やがてチイチイチイ、という可愛い鳴き声のヒナが、黄色い縁取りのある大きな口を目一杯に開け、エサをねだる様は初夏の風物詩だ。

ご存知のようにツバメは、民家の軒下で巣作りする鳥である。
命を脅かす敵を避けるため人の傍での巣作りを選んでおり、農家の玄関扉を入り土間の天井の太い梁に巣をかける。
農家も巣がかけやすいように、梁に小さな板を打ち付け、昼間は常に玄関扉を開放されていた。そうしないと、ツバメの夫婦は出入りが出来ないからだ。のどかな話である。

私のふるさとはかつては、「養蚕」も盛んであった。
蚕(かいこ)は、広い玄関土間に棚を組み飼われているお宅が多く、この時期は、ヒラリヒラリと玄関を出入りするツバメと、与えられたばかりの瑞々しい桑の葉を食む、蚕のパリパリという音を懐かしく思い出す。

さて、今時は農家でも玄関を開けっ放しのお宅はさすがにない。ツバメはどこに巣を作ってるのか、と思って散歩してると、あったあった、住宅に繋がった車庫の中、巣を見つけた。巣の下には糞が落ちているので探しやすい。
車庫に入らせていただき見上げると、2羽のヒナが見えた、愛らしいこと!

そう言えば、いつの頃からか うぐいす の声は聞こえなくなった。
繁殖期が終わったのかしら。

2020年5月   くどいけいこ