コラム「猫の手も借りたい」№206 ネコ係

さて、私のシマには「飼い主のいないネコ」はいなくなった、とお知らせしたが、ほぼ同時期に、置きエサをしていたご夫妻が転居されたことにより、オスの黒ネコが1匹、取り残されてしまっていることが判った。
ご夫妻の住宅はアパートの2階にあり、その階段を黒ネコが行ききするのを、私も見かけたことがあった。
その黒ネコが、近隣のゴミを荒らすようになったとの話をご近所で耳にするようになったからだ。
やれやれ。
仕方がないのでとりあえず、様子を見ることにした。
他のエサ場があれば、そちらで落ち着く可能性もあるかも、と推察したからだ。
しかし、ゴミ荒らしは止まないようである。

私は1日に数回、特に夜間を中心にパトロールに出ることにし、加えてご近所で様子を聞ける人には話を聞くこととし、黒ネコの行動追跡をした。
当てにしていたフードがなくなると途端に困る子もいる。数ヶ所のエサ場を持っていても、ナワバリ意識が強いネコたちに分け合う感覚はない。
私のシマ近くで、飼い主のいないネコの給餌をしている数人に連絡を取って、エサがダブっていないか確認したが、他のエサ場にこの黒ネコが立ち寄っている形跡はなかった。

まず、置きエサを食べていた場所から大きく離れていないところに、少しのエサを置いてエサ場所を教えた。
次に、ゴミを荒らしていると目撃された場所の近くで協力を頼める人に相談し、そこにもエサを少し置いて、様子を見た。
置きエサがルール違反なのは百も承知だが、この黒ネコ以外には、この付近には「飼い主のいないネコ」はいないようだし、追いかけてエサを与えようにも、なかなか遭遇できない。
それなら、場所を決めてエサを置き、そこに目的のネコがくるように仕向けた方が効率がよいと判断した。

そうこうしている間に、黒ネコは置きエサの場所で姿を見ることができるようになった。
よく観察していると、その付近の住宅と住宅の間に掛けられた、ブルーシートの上で寝ている彼を見かけるようにもなった。雨が凌げる程度の場所だ。
ネグラもないようなら、なおさらなんとかしないとならない、という気持ちが湧き上って、そう考える自分に「やれやれ」である(笑)。
「うちのネコハウスを提供しよう」と決め、うちでエサやりを始めた。
うちの周囲には、すでにその黒ネコしか確認できていないので、エサを私宅の敷地内に置くことにした。
姿を見かけたら、なるべく声をかけ、ネコ撫で声で「うちにおいで」と手招いた。
その甲斐あってか、だんだん私を認識してくれるようになり、敷地内にもくるようになった。

まだハウスは使っていないが、寒くなれば必然的に使ってくれるのではないか、と思ってはいる。

しかし、これでは私は完全な地域の「ネコ係」ではないか(笑)。

東京都S区のボランティアさんが書かれたものを読んだことがあるが、S区は、一世代前のボランティアさんが高齢になられ、TNRから引退せざるをえなくなられたそうだ。そのまま誰も引き継がずTNRは行われなかった結果、数年でまた元のTNRをしていない状況に戻ってしまったと嘆かれ、こうも書かれていた。
「結局は、地域住民の意識を変えていき、地域の問題として住民が取り組まないと、ボランティアは永遠にネコ係として、地域でネコのことをやっていかなくちゃいけなくなり、住民はありがたがりますが “ボランティアの仕事(努め)” と認識し、住民自らが行動しなくなります」とあった。

TNRと保護も尊い活動だが、しかし、住民主導の活動に変えていかないと、この問題は解決しないのである。
行政や地方自治体を巻き込む、などの思い切った方向転換が必須と、このところ痛感している。

黒ネコくんは「黒ちゃん」とありきたりの呼び名だが、落ち着いてきた。
次は去勢手術だな。

2020年12月 くどいけいこ