コラム「猫の手も借りたい」№48 疥癬(かいせん) 上

人にもあるが、猫にも「疥癬(かいせん)」という病気がある。調べてみると、猫に「猫ヒゼンダニ」というダニが寄生することによって発症するとある。
この「ヒゼンダニ」だが、なんと皮膚の中に潜り込んで悪さをするから厄介である。ヒゼンダニに感染した猫は猛烈に痒いから、掻いて掻いて掻きまくる。

一番最初は耳の裏や顔辺りに寄生、脱毛や赤い発疹などの炎症が見られる。その後は背中やお腹、脇などへも病変が広がる場合もある、とのこと。

何年か前に保護した生後約4ヵ月のオスの子猫、バス通りに面するファミリーレストランの庭先で見つけた。翌日に他の子猫の里親先へのお届けがあったので、バスの時間を調べに来ていて行き遇った。

黒白で「ハチワレ模様」という、両目の下が八の字のような白い毛色、頭、体の外側部分はほとんどが黒、お腹や4つ足の先が白くてソックスを履いているように見える。人気のある「柄」だ。おまけに薄汚れてはいたが「ロングヘアー」だった。

観察していると、しきりに耳の裏を掻いている。どうしたんだろう。傍に寄って来たので更によく見てみた。顔が引っ掻き傷だらけ、耳から背中にかけても血だらけに近い状態。とっさに「疥癬だ」と思った。見ている前でも「カッカッカ」っと後足でしきりに掻く。忘れもしない8月の旧盆の時期で、まだまだ残暑が厳しい時節、傷口が化膿し易い。これは放ってはおけないと、保護する覚悟をした。

多少大きくなってはいたが、「ハチワレ」の黒白ツートンカラーが美しい上にロングヘアーの人気も高いし、なんとか里親さんを見つけてやらなくちゃ。

さて、ハチワレくん、いざ保護しようと手を伸ばすと、するりと逃げてしまう。近くに止めた自転車にたまたまフードとキャリーバックを積んでいたので、それを使って保護しようと一瞬その場を離れたら見失った。

それから2時間、探しに探したが見つからない。諦めて帰ろうと思ったその時、若いカップルにドライフードを貰っているハチワレくんを発見、なんと広いバス通りを渡り、反対側の大きなペットショップの前にいた。よくも交通事故に遭わなかったものだ。恐らく時々通りを渡って行き来し、ファミリーレストランでも残り物を貰っていたのであろう。感染している疥癬を見ても、結構長い間「ノラ暮らし」をしていたに違いない。よく生きていたものだ。運の強い子である。その後キャリーバックでうまく保護でき、覗いたら「シャー」っと威嚇された。

帰宅したら深夜に近い時間。まず、食事。高栄養で食べやすい缶詰を与え、たっぷりのお水。むさぼるようにひとしきり食べ、水も飲んでいる。食欲があって何より。
その後、皮膚の状況を記録しようと写真を撮影、掻きむしった皮膚は血の塊とカサブタだらけ、脱毛も見られ悲惨な状態である。とりあえずすぐにノミ・ダニの駆除剤を使用。疥癬の治療は動物病院にお任せするにせよ、出来ることはしておいた方がベター。

その頃になるとハチワレくん、ゴロゴロ喉を鳴らして私の膝から降りようとしない。可愛い。思わず涙が零れる。捨てられたのであろうか、可哀想な境遇に想いを馳せる。そのままうちで一泊し、翌日の朝一番で動物病院を受診することにした。

 

続きます。

 

2012年9月 くどいけいこ