コラム「猫の手も借りたい」№79 大雪の中で

sirokuro_3年の冬は寒かった。おまけに東京が経験したことのない積雪。むろん私も未経験でびっくり。

だが、外の猫たちはもっとびっくりしたに違いない。
本当にすごい雪だった。20数センチの積雪、その上、短時間で降ったため、さらさらの雪で、除雪してもすぐ積る。この雪で帰って来なくなった子もひょっとしたらあったかも知れない。
「20センチの積雪」の日、私は仕事が休みで自宅にいた。確か土曜日だった。
時々外の様子を見ながら、うちの階段下にある2匹分の猫ハウスの周囲を雪かき。しかし、雪かきしてもしても雪はどんどん積って行った。

午後になって外に出ると更にすごい雪になっていたが、階段下のハウスには雪は入っておらず、このままハウスにいてね、と思ったとたん、1匹がハウスから飛び出し深い雪の中へ。それこそ「ラッセル」しながら進んでいくのが見えた。私はどうすることも出来ず見ているしかなかった。その子は鳴きながらどんどん離れて行ってしまったのだ。

2匹いるもう1匹を確認したが姿がない。お昼頃には2匹ともハウスにいたのを確認していたので、1匹はその後どこかへ行ってしまったことになる。

最初にハウスを離れた1匹は「猫の手も借りたい№2324」の「うらめしや~」のクロちゃんであった。
彼女は慎重で利発、もう1匹うちの庭にいるキジトラの「トラミちゃん」と仲良しで、トラミちゃんをリードしながら上手に暮らしている。

そのクロちゃんは、すでにハウスを後にしていたことになる。

クロちゃんは、たまに朝、ハウスにいないことがあったから、他にもネグラはあるらしいとはうすうす感じてはいたが、今回のこの大雪でそれがハッキリした。

トラミは鳴きながら深い雪の中を移動していたが、そのうち姿が見えなくなった。その日は待てど暮らせど、2匹とも戻って来ることはなかった。

夜になり雪は峠を越したが、猫たちは戻って来ない。とにかく餌場の除雪をし待ってはみたがまだまだ積雪が多く、いったい2匹ともどこへ行ったことやら、と心配しどおし。この雪の中、身を寄せられる場所は限られているはず、雪に行く手を阻まれる場所、例えば屋根伝いや塀を移動するところへは行かれない。

雪の止んだ真夜中、猫たちを探してみた。「クロちゃんやーい、トラミちゃんやーい」と思い当たる場所は声を掛けてみたが現れることはなかった。私はほとんど寝られず。

翌日はピーカンの晴れ、あっという間に雪は解け出した。しかし、2匹は戻って来ない。
昨晩は大雪でかなり温度も下がり、寒い晩であったので暖もとれていないかな、フードもなかっただろうから余計条件も悪い。ひょっとしてもう帰って来ないかも、とも考えた。

午前中、戻らない。夕食時になってもダメ。その間に私は何度か探しに行ったが、見つけることはできなかった。

真夜中、もう寝るか、と最後の確認で玄関を開けると、「にゃーん」とクロちゃん。はー、びっくり。

早速フードを用意して玄関を出ると、トラミちゃんも姿を現した。2匹とも普段通りで大変元気、やつれた様子もない。

フードは普通に食べたが、その日はカイロの入ったハウスには泊って行かなかった。

その後4~5日はハウスでは眠った様子はなし。よほど大雪が怖かったのであろう。

私たち人間は、階段下は絶対安全だから大丈夫と解っているが、初めての大雪で猫たちは「危険」と判断したようである。

前々から別のネグラを持っていたクロちゃんが、先に階段下から避難、その後トラミちゃんもクロちゃんの後を追って行ったものと拝察される。

クロちゃんがトラミを守ってくれたのである。

しかし、すごい生命力だこと、脱帽。

 

2014年4月 くどいけいこ