コラム「猫の手も借りたい」№61 猫の宿命 上

「慢性腎不全」は猫に非常に多い病気である。慢性腎不全を発症すると、腎臓の機能が低下し老廃物を体外に排出できなくなり「尿毒症」を起し死に至る。
2007年に亡くなったうちのチャオ(♂ 享年16歳)も慢性腎不全を発症、うちのタマ(♀ 推定13~14歳)も慢性腎不全になり、タマはここ1年ばかり病気の進行を遅らせるための治療を続けている。

この病気は、猫目(ネコモク)であるライオンとかヒョウ、チーターなども同様に、高齢になると逃れられない病気であるらしい。また、この腎臓の疾患は一度発症すると治ることはなく、それは人も同様であり「人工透析」と呼ばれる、血液中の老廃物を濾過して体内に戻す治療が知られているが、これもあくまで対処療法で、残念ながら「完治」するわけではない。

猫は、人や犬と異なり「雑食」ではなく「肉食」である。肉に多く含まれる「タンパク質」は血となり肉となり猫のからだをつくるエネルギーとして使われた後、息や汗のほかに老廃物(尿素窒素など)となる。この老廃物を除去し体外に排泄するのが腎臓の仕事である。この老廃物は体から自然に出て行くことはなく、腎臓のみがこの老廃物を除去し排泄できるのである。
「肉食」の猫はそれ故に腎臓にかかる負担が雑食動物に比べて大きく、猫目(ネコモク)の宿命とでも言うべき病気が「慢性腎不全」なのである。

この病気は「タンパク質の摂取量」に大きな鍵があり、若い猫の身体をつくるのにタンパク質は欠かすことの出来ない大切な栄養素で、しっかりと摂取させる必要がある。しかし、ずっと同じ量のタンパク質を摂取し続けていると腎機能がパンクし低下して行くことになりかねない。
この摂取量をシニア世代(7歳頃)になった辺りから、ぐっと減らすことで慢性腎不全の発症を遅らせたり、回避したりすることが出来るであろうと言われている。

ということで、猫は特に気をつけなければならない病気であるが、高齢になればどんなに気をつけていても腎機能は低下して来ることが多い。
私も1匹、猫を腎不全で失っているから、フードに気をつけていたにも関わらず、うちのタマも1年前から腎不全の治療を開始した。

最初の猫「チャオ」を慢性腎不全で失った時は、本当に後悔した。私が与えていたフードは腎不全になれ、と言わんばかりのフードだったから。タンパク質の制限など無縁のものと思っていたからである。心の底からチャオに詫びたいと思っても後の祭りだった。
それでもチャオは16歳という、長寿に入る生を全うしてくれた。丈夫な子だったんだな、と思う反面、  もし毎日のフードに気をつけてやっていればもっと長生きしたと思うと、いたたまれなかった。
だからタマは本当に注意して、腎不全だけではなく色々な病気対応のフードを与えた。

タマは元ノラ猫で、私が現在の家に越して来た時、屋外にいた子である。全く人馴れしておらず、紆余曲折はあったがなんとか馴らしてうちの子にした。当初、動物病院のドクターの診立てでは、推定年齢5~6歳くらいでは、とのことだった。もうそれから8年の時が流れた。
健康でいたのは来た当初の1~2年で、その後は大きな病気が続いた。
お腹の中に「肉芽腫」という良性の腫瘍が出来、腸閉塞を起して大学病院で大手術をした。
良くなった翌年、今度は「脳炎」を発症、歩けなくなり、また大学病院のお世話になった。MRIを撮って下さったドクターからは、命の保証は出来ない、と言われた。

 

続きます。

 

2013年5月 くどいけいこ